Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
血管:血流評価

(S399)

末梢動脈疾患に対する血行再建術後におけるgraft surveillanceの有用性

Usefulness of graft surveillance after vascular reconstruction

赤坂 和美1, 中森 理江1, 樋口 貴哉1, 柳谷 貴子1, 東 信良2, 笹嶋 唯博2

Kazumi AKASAKA1, Rie NAKAMORI1, Takaya HIGUCHI1, Takako YANAGIYA1, Nobuyoshi AZUMA2, Tadahiro SASAJIMA2

1旭川医科大学病院臨床検査・輸血部, 2旭川医科大学循環・呼吸・腫瘍病態外科学

1Department of Medical Laboratory and Blood Center, Asahikawa Medical University, 2Department of Surgery, Asahikawa Medical University

キーワード :

【はじめに】
自家静脈グラフトを用いた下肢血行再建術後においては,グラフトが閉塞に至ってから自覚症状が出現する事が少なくない.遠隔期成績の向上のためには,限局性の進行性内膜肥厚によるグラフト狭窄や宿主動脈の病変進行を早期に発見し,グラフト閉塞に陥る前にその修復をすることが不可欠である.そのため当院においては,術後超音波検査を血管外科外来診察室で定期的に施行している.
【目的】
超音波検査によるgraft surveillanceの有用性について検討すること.
【対象と方法】
2010年11月から2011年10月までの期間,当院において自家静脈グラフト修復術・再手術を施行した34肢について,定期的な超音波検査を受けていたA群(17肢)と,他院での経過観察などのため受けていなかったB群(17肢)において,グラフト閉塞の頻度や治療法の選択などについて比較した.超音波検査による修復術の適応は,狭窄部の収縮期最高血流速度≥300 cm/s,グラフトの収縮期最高血流速度≤45 cm/sに,前回との変化を考慮して判断した.
【結果】
A群において16肢は超音波検査で狭窄病変が発見され,1肢は術後6週の超音波検査で認めなかった狭窄病変が,3カ月後入院中の他院の血管造影で指摘された. A群の1肢は,手術時に閉塞していたが,B群におけるグラフト閉塞6肢に比して有意に少なかった(p<0.05).B群の11肢は他の画像診断にて狭窄病変が確認されたが,当院入院後に超音波検査を施行した5肢全例において狭窄病変を確認できた.病変の局在は,吻合部を含むグラフトが29肢(A群13肢,B群15肢),宿主動脈の病変進行が6肢であった(A群4肢,B群2肢). 34肢中30肢に修復術を施行し, A群B群ともに再手術は2肢ずつと差を認めなかった.
【考察】
定期的に超音波検査を施行していたA群においては,グラフトの血流が低下している場合に閉塞の危険が高いと判断し,速やかに修復術を施行しているため,グラフト閉塞が少ないと考えられた.今回グラフト閉塞計7肢中4肢において,血栓摘除と修復術により治療が可能であったが,グラフト閉塞は限局性狭窄病変に比して再手術となる可能性が高く,限りあるバイパス材料である自家静脈の使用を最小限にとどめる意味でも回避することが重要である.また,修復術・再手術施行34肢中6肢(18%)が宿主動脈の病変進行によるものであり,術後超音波検査を施行する際には注意が必要と思われた.
【結論】
超音波検査によるgraft surveillanceは,自家静脈グラフトの閉塞を減少させる可能性が示唆された.