Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
血管:血流評価

(S398)

全身性炎症反応症候群と肝動脈流速との関係

Relationship between hepatic arterial velocity and systemic inflammatory response syndrome

阪上 順一1, 保田 宏明1, 十亀 義生1, 片岡 慶正2, 伊藤 義人1

Junichi SAKAGAMI1, Hiroaki YASUDA1, Yoshio SOGAME1, Keisho KATAOKA2, Yoshito ITOH1

1京都府立医科大学消化器内科, 2大津市民病院消化器内科

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Kyoto Prefectural University of Medicine, 2Department of Gastroenterology and Hepatology, Otsu Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
われわれは,以前より各種疾患において肝動脈流速が上昇することを報告してきた.しかしながら,現在に至るまで肝動脈流速上昇に対する系統的報告例は少ない.今回われわれは肝動脈流速異常高値症例の病態解析を目的とし,とくに全身性炎症反応症候群(SIRS)との関連について検討することを目的とした.
【方法】
健常者の固有肝動脈最高流速(PHA Vmax)を測定し,正常域(<M+2SD)と異常高値(>M+4SD)を設定した.消化器系受療者で固有肝動脈流速を測定できた症例からの正常域症例と異常高値症例を比較検討した.加えてSIRSスコアと血清CRP値を測定した.
【成績】
正常者のPHA Vmaxは42.2±14.3cm/s(M±SD),70.8 cm/s (M+2SD), 85.2 cm/s (M+3SD), 99.5 cm/s (M+4SD)となった.異常高値症例をPHA Vmax≧100cm/sと定義すると,悪性新生物43%,良性疾患/その他が57%であった.悪性新生物では,肝細胞癌,膵癌,胆道癌が多く,良性疾患では,急性膵炎,急性胆嚢(管)炎,が多かった.入院を要する病態である症例が87.5%と高率であった.また,PHA Vmaxの上昇に従って血清CRP値の上昇かみられ,とくに100cm/sを超えた付近から急激に血清CRP値が上昇していた(図-上).SIRSスコア別にみたPHA VaxはSIRSスコア2点以上で有意な上昇を認めた(P<0.0001,SIRSスコア0点症例をコントロールとしたDunnett検定)(図-下).SIRSスコアに対するPHA VmaxのROC曲線下AUCでは,0点;0.55,1点;0.51,2点;0.65,3点;0.77,4点;0.92,2点以上;0.69,3点以上;0.82となった.
【結論】
肝動脈流速異常高値例の多くは入院治療を要し,肝胆膵悪性疾患と胆膵炎症性疾患が多くみられる.100cm/sを超える高流速症例では高度に血清CRP値が上昇していることが多い.またSIRSスコアとの関連も強く,全身性炎症反応症候群の存在を肝動脈に対する超音波血流解析から予測できる可能性がある.