Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
血管:頸動脈

(S397)

造影剤を使用せずエコーガイド下に頸動脈ステント留置術を施行した6例の検討

Study of six cases that were given carotid stenting technique under the echo guide without using contrast material

濱口 浩敏1, 福住 典子2, 沖 都麦2, 増田 由佳子2, 嘉納 由美子2, 藤田 敦史3

Hirotoshi HAMAGUCHI1, Noriko FUKUZUMI2, Tsumugi OKI2, Yukako MASUDA2, Yumiko KANOU2, Atsushi FUJITA3

1神戸大学医学部附属病院神経内科, 2神戸大学医学部附属病院検査部, 3神戸大学医学部附属病院脳神経外科

1Department of Neurology, Kobe University Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Kobe University Hospital, 3Department of Neurosurgery, Kobe University Hospital

キーワード :

【目的】
頸動脈狭窄に対する外科的治療の一つにステント留置術(carotid artery stenting:以下CAS)がある.通常は透視下で造影剤を使用して施行するが,造影剤アレルギーのある患者や,腎機能障害がある患者では,造影剤の使用が困難であるため,治療適応は慎重に検討する必要がある.今回,造影剤を全く使用せず,エコーガイド下にCASを施行した症例について検討する.
【対象】
腎機能障害もしくは造影剤アレルギーを基礎疾患とする内頸動脈高度狭窄例6例.事前のエコー検査でプローブ固定ができることを確認し,血管撮影室にてエコーガイド下にステント留置を行った.その際,ステント留置の成功率,内頸動脈(internal carotid artery:以下ICA)の遮断時間,ステント留置時に生じた問題点などについて評価した.
【結果】
全例男性,年齢64-80歳(平均69.7歳)であった.5例が腎機能障害,1例が造影剤アレルギーの既往歴があった.2例が右内頸動脈高度狭窄,4例が左内頸動脈高度狭窄であった.プラーク性状はecholucent plaque主体が2例,echogenic plaque主体が3例,calcificated plaque主体が1例であった.いずれも術中術後に問題なくステント留置に成功した.ICAの平均遮断時間は24.7分であった.6例中2例に翌日のMRIで拡散強調画像の高信号を認めたが,症状出現例は認めなかった.全例で術後腎機能の悪化は認めなかった.
【考察】
通常,頸動脈狭窄に対するステント留置におけるエコーの役割としては,プラーク性状の評価や狭窄率の推定,ステント留置前後でのプラーク性状の変化,ステント内への突出の確認,血流変化の観察などが中心である.今回のようにエコーガイド下でステントを留置する場合のエコーの役割としては,上記に加えて,カテーテル挿入の部位決定,カテーテル先端の誘導,ステントサイズの決定,distal protection中の評価,ステント挿入中のプラーク変化の観察,ステント挿入前後の血流変化,debris吸引時の血流評価など,様々な部分で重要な役割を持つ.また,手技中の血行状態変化をリアルタイムに確認することができる.一方で,エコーを用いる欠点としては,検者の被爆の問題(特にプローブを当てている側の手は頸部に接して直接被爆を受けるため,鉛入りの手袋などで遮断が必要),エコーで確認できる範囲外は評価できないこと,頸部固定板があり,下顎挙上ができないため検査野が制限されること,ICAの遮断時間が造影剤使用時と比較して延長すること,透視と同時にエコー画像を描出する場合は,プローブ固定位置をずらさないと観察しづらいこと,エコー装置の設置位置やプローブの持ち方などが通常と違うため,工夫が必要であること,リアルタイムで治療が進むため,動画保存の際,静止しての保存が難しいことなどが考えられる.また,術者にもエコー画像の見え方を習熟していただくことも必要と考える.これらを工夫すれば,エコーガイド下CASは非常に有用な方法であると考える.
【結語】
工夫次第でエコーガイド下にCASを施行することは有用な方法である.