Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
血管:動脈硬化への応用

(S395)

血流依存性血管拡張反応(FMD)に伴う上腕動脈血管径の超音波画像解析プログラムの開発

Development of a Program for Analysing Flow-Mediated Vasodilation(FMD) in Brachial Artery

越智 典樹1, 富山 勇輝1, 加藤 千恵次2, 堀江 達則3, 井上 真美子4, 西田 睦4, 吉永 恵一郎5

Noriki OCHI1, Yuki TOMIYAMA1, Chietugu KATO2, Tatunori HORIE3, Mamiko INOUE4, Mutumi NISHIDA4, Keiitirou YOSHINAGA5

1北海道大学保健科学院, 2北海道大学保健科学研究院, 3北海道大学病院放射線部, 4北海道大学病院検査・輸血部, 5北海道大学大学院医学研究科分子イメージング講座

1Graduate School of Health Sciences, Hokkaido University, 2Faculty of Health Sciences, Hokkaido University, 3Department of Radiology, Hokkaido University Hospital, 4Division of Clinical Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, 5Department of Photobiology, Hokkaido University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
今日,血管内皮機能を正確に測定することは臨床的に極めて重要な技術とされている.血管内皮機能の低下は動脈硬化の最初のステップであるとされ,また冠危険因子や動脈硬化性疾患・心血管系合併症をきたすほとんどすべての病態において内皮機能の異常が存在することなどから,血管内皮機能を適切に評価することにより個々の症例のリスクアセスメントのみならず,これを予後の代理ポイントとして治療効果のモニタリングに応用できる可能性が期待されている.しかし,臨床の現場では目視による測定である血管内径の測定は非常に煩雑な作業であり,測定にかかる時間も長い,また技師の主観的な部分も多いなどの問題がある.そこで,今回この問題を解決するためにこの作業を自動化するプログラミングを作成し,検証を試みた.
【対象及び方法】
健常人ボランティアのFMD検査にて得た上腕動脈の超音波動画像データ10例において検証を行った.今回はC#言語を用いたプログラムを作成することが主な研究の内容である.まず超音波動画データより,今回の測定で用いるBMP形式の画像に抽出,切り出しを行う.その画像より以下の方法で血管内皮径の最大径を求める.画像処理として,赤成分のみを抽出し,白黒の画像とすることで測定にノイズとなるラインの除去をした.さらにコントラスト処理をかけることにより,ノイズとなっている多重反射のラインの影響を除去し,解析を容易にする画像データに加工した.次にこのプログラムの測定では時間変化における最大径の変化の画像が必要なため,測定に必要な画像のみを選択する.選択した画像についてMモード像の部分のみを抽出し,隙間なく並べることにより,上腕動脈血管の時間的変化を一枚の画像としてあらわすことができる.血管径測定には,血管の中心から上下方向にコントラストの変化点となる閾値を調べ,設定する.合成した画像について,設定した閾値を用いて上腕動脈血管径の時間変化の状態を画像化する.その画像から上腕動脈血管径を1ピクセルごと求め,時間変化における血管径と最大径を記録し,ヒストグラムを作成した.そのデータをもとにFMDによる血管拡張率を求めた.すべての検査データについて血管拡張率を測定し,目視による血管拡張率とプログラミングによる血管拡張率との間に相関が存在するか検定した.
【結果及び考察】
今回,解析可能であったデータは全10例中7例であった.3例については解析困難な症例であった.目視による血管拡張率とプログラミングによる血管拡張率との相関係数を算出し,相関係数は0.832(p<0.05)と有意な正相関が得られた.以上より,今回開発したプログラムは,目視と同等の結果を算出することを確認した.検査データから切り出した画像は,画像抽出の過程で粗くなるため,画像処理を行い改善を図ったが解析困難な症例が数例あった.今後困難な症例に対しては,ノイズの処理に改良を加えていくか,血管径の測定の方法を変えることで改善できると考えられる.また,測定した最大径が異常値であった場合にヒストグラムから正しい値を選択できるようにするプログラムを作成することでより正確性や利便性の向上が出来ると考えられる.
【結論】
今回の研究では,数分間のFMD検査における超音波動画像から血管径の拡張率を自動測定するプログラムを開発できた.技師の目視による拡張率とプログラミングによる拡張率は上記指標で有意な正相関を認め,今回開発したプログラムは血管径拡張率の客観的評価に有用であると考えられる.また,測定にかかる時間の短縮,労力を減少させる可能性があると考えられる.