Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
血管:動脈硬化への応用

(S394)

Flow-mediated dilation(FMD)検査法における月経周期の影響

Impact in Endothelium-Dependent Flow-Mediated Dilatation of the Brachial Artery by the Menstrual Cycle

末永 弘美, 長田 麻美子, 児玉 彩花

Hiromi SUENAGA, Mamiko OSADA, Ayaka KODAMA

山口大学大学院医学系研究科保健学専攻

Faculty of Health Sciences, Yamaguchi University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景と目的】
上腕動脈におけるFMD検査法は血管内皮機能評価法として,広く用いられている.血管内皮機能低下は動脈硬化症の初期病変とされているが,FMDの心血管イベントの予測因子としての有用性は,現在のところ明らかとはなっていない.近年,FMDよりもむしろshear stressの心血管イベント危険因子との関連が強いことが報告されるなど,FMD検査におけるshear stressの定量化が注目されている.一方で,エストロゲンは血管内皮保護作用を持つと考えられているが,そのFMDやshear stressに及ぼす影響についての検討はあまりなされていない.本研究では,若年健常女性の性周期におけるFMDとshear stressの変化の程度について検討を行った.
【対象と方法】
対象は若年健常女性15名(21±2 歳)とした.対象者には基礎体温測定を指示し,その結果から月経期,卵胞期,黄体期の3期に分類しFMD検査を実施した.FMD測定における駆血条件は,SBP+50 mmHg,5 minの前腕部駆血とした.13.5 MHzの高周波プローブを搭載した超音波診断装置2台を用いて,FMD測定のために安静時および駆血解除後の血管径変化を右上腕動脈の中枢側で,shear stressの測定のために血流速度の変化を右上腕動脈の抹消側で,それぞれ連続記録した.shear stressの指標として,駆血解除後のpeak flow,peak shear rate(SR: shear rate=velocity/diameter),駆血解除直後からピークまでのpeak flow AUC(area under curve),peak SR AUC,駆血解除直後から30 sec後までのflow AUC(30 s),SR AUC(30 s)を算出した.また,超音波診断装置を用いて,左右総頚動脈の血管弾性率(stiffness parameter: β値)を測定し,FMD検査終了後の採血によって,shear stress算出のための血液粘度とエストラジオール(E2)を測定した.
【結果】
FMD,shear stressの各指標,血管弾性率は,月経周期によって有意な変化は認めなかったが,月経期血液粘度が黄体期に比べ有意に低値を示した.また,E2は,月経期に比べ黄体期がやや高値を示す傾向はあったものの,月経周期における有意な変化は認めなかった.
【結論】
若年健常女性において,月経周期におけるE2変化が少なければ,FMDやshear stress測定値に対する月経周期の影響は少ないものと考えられた.さらにデータの集積が必要ではあるが,エストロゲンの血管保護作用を考慮するならば,閉経前女性における血管内皮機能は,月経周期を包括的に評価・検討する必要があるかもしれない.