Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
血管:動脈硬化への応用

(S394)

コレステロールのFMD値への影響

The effect of serum cholesterol on Flow Mediated Dilation values

木村 友維1, 新江 明子1, 中鉢 由香1, 永井 俊一2

Yui KIMURA1, Akiko ARAE1, Yuka CHUBACHI1, Shunichi NAGAI2

1医療法人永井医院検査, 2医療法人永井医院循環器内科

1Yamagata Japan, Nagai Clinic, 2Yamagata Japan, Nagai Clinic

キーワード :

【はじめに】
LH比(LDLコレステロール/HDLコレステロール)は血管内超音波により評価された平均プラーク占拠率と最も相関が高いと報告されている.LH比は,危険因子3つ以上を有する,または心筋梗塞や狭心症,糖尿病,高血圧と診断された人は1.5以下を,該当しない人は2.0以下が目標値とされている.血流依存性血管拡張反応(FMD)検査は,血管内皮機能の評価として用いられ,内皮から生成される一酸化窒素(NO)が,一定時間駆血して開放した後に血管を拡張させる割合を測定している.NO産生障害や不活性化が,動脈硬化へ進展させると言われており,動脈硬化の前段階である血管内皮機能障害を検出するFMD検査を用いてLH比との関連を調べた.
【目的】
動脈硬化の進展が少ない若年者を対象にコレステロールがFMD値にどのような影響を与えるのかを明らかにする.
【対象】
2010年11月から2011年8月までに,FMD検査,血液検査を行った20歳から50歳代の39名(男性17名,女性22名,平均年齢46.9±9.4歳).
【方法】
①LH比,LDLコレステロール,HDLコレステロールとFMD値の相関を調べる.②LH比2.0未満群と以上群に分け,FMDの値を比較する(t検定).③FMD正常群(≧6.0%),異常群(<6.0%)でLH比,LDLコレステロール,HDLコレステロールの値を比較する(t検定).
【結果】
①LH比とFMDの相関ではLH比が高値になるに従って,血管の反応性が低下し,やや強い負の相関を認めた(r=-0.44).LDLとFMDの相関ではLDLが高値になるに従って,血管の反応性が低下し,強い負の相関を認めた(r=-0.5).HDLとFMDの相関では,相関は認められなかった(r=0.09).②LH比を2.0で区切り,2.0以上群と2.0未満群のFMD値の比較では,LH比2.0以上群では2.0未満群に比べ有意に低値を示した(7.9±3.7 vs 4.0±2.5%, p<0.001).③FMD正常群と異常群でのLH比,コレステロール値を比較すると,LH比は,FMD異常群は正常群に比べ有意に高値を示した(1.6±0.6 vs 2.2±0.8, p<0.05).LDLは,FMD異常群は正常群に比べ有意に高値を示した(94.0±19.3 vs 123.4±36.5mg/dl, p<0.01).HDLでは,FMD正常群と異常群に有意差は認められなかった(61.4±10.8 vs 59.2±13.4mg/dl, p=ns).
【考察】
LDLが上昇すると,NOの産生低下や不活性化を引き起こす酸化ストレス状態が生じるため血管内皮機能が低下すると言われている.今回の研究で,LH比が高値になるほど血管内皮障害が起きやすく,FMD異常群でLH比とLDLが高値を示したことから,LDLの上昇が血管内皮障害に影響を与えていると考えられた.血管内皮機能障害は不可逆的なものではなく,薬物療法や生活習慣の修正により改善が可能であると言われている.血管内皮機能障害の段階でコレステロールの治療を行うことによって,動脈硬化への進展を抑制することができると考えられる.
【結語】
LH比とLDLが高値になるほど血管内皮機能は障害されていた.