Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:右心機能

(S387)

健常人の運動負荷エコーによる肺動脈圧変化の評価

The evaluation of Exercise-induced changes in pulmonary artery pressure

西村 眞樹1, 山口 悦郎1, 岩瀬 正嗣2, 伊藤 義浩2, 椎野 憲二2, 杉本 邦彦3, 犬塚 斉3

Masaki NISHIMURA1, Etsurou YAMAGUTI1, Masatsugu IWASE2, Yoshihiro ITOU2, Kenji SHIINO2, Kunihiko SUGIMOTO3, Hitoshi INUDUKA3

1愛知医科大学病院呼吸器アレルギー内科, 2藤田保健衛生大学循環器内科, 3藤田保健衛生大学病院超音波室

1Respiratory Medicine and Allergology, Aichi Medical University Hospital, 2Cardiology, Fujita Health University Hospital, 3Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital

キーワード :

【目的】
健常人に対する運動負荷での肺動脈圧変化に関する超音波検査での検討.
【対象・方法】
既往に心疾患を伴わない健常人30症例(全例男性,平均年齢57歳)を対象とした.方法は,臥位エルゴメーターによる運動負荷試験を25Wから開始し,3分毎に25Wずつ負荷を増大させ,150Wを最大として自覚症状の限界まで負荷を行った.回転速度は50rpmを維持するように施行.終了後5分まで,それぞれの段階において連続波ドップラー法により三尖弁逆流の最大速度と圧較差を測定し評価した.また,三尖弁逆流波形を0から5段階にスコア化し波形の明瞭度の評価を行った.
【結果・考察】
対象の内,2例では安静時,負荷時とも計測可能な波形が得られなかったが,残りの例では計測可能であり,この例を解析した.三尖弁逆流波形の明瞭度は負荷25Wから50Wで最も良好であったが,最大負荷時でも計測が可能な三尖弁逆流波形を非侵襲的に記録することが可能であった.安静時は2m/s, 15mmHg(5-26).負荷25W;2m/s, 21mmHg(10-29),50W;2.4m/s, 24mmHg(12-38),75W;2.5m/s, 26mmHg(11-37),100W;2.7m/s, 31mmHg(13-44),125W;2.9m/s, 34mmHg(16-53)であり,安静時に比べて有意な増大が認められた.年齢を50歳前後で分けて検討すると,安静時に差は認めなかったが,最大負荷時には50歳以上の群の方が有意に大となった.Eduardo らは,健常人とアスリートを比較した試験において,運動負荷の程度が違うものの負荷三尖弁逆流の程度は夫々2.27m/s,3.41m/sまで増加する結果を示している.我々の試験の結果も踏まえると健常人に対する運動負荷での三尖弁逆流の程度について,最大速度3m/sまでは病的意義はない可能性が高いと考えられた.また,我々の検討では,年齢別の違いを評価するために50歳以上の群,50歳未満の群別に評価を行った.50歳以上の群が有意差は示さなかったものの高くなる傾向を示した.50歳未満では,安静時1.9m/s, 15mmHg(5-26),25W;2.2m/s, 21mmHg(10-28),50W;2.4m/s, 24mmHg(16-32),75W;2.5m/s, 25mmHg(11-34),100W;2.6m/s, 28mmHg(13-44),125W;2.8m/s, 32mmHg(16-44)であり,50歳以上では安静時2m/s, 16mmHg(12-22),25W;2.2m/s, 21mmHg(16-29),50W;2.5m/s, 26mmHg(12-38),75W;2.7m/s, 29mmHg(22-37),100W;2.9m/s, 34mmHg(26-44),125W;3m/s, 37mmHg(32-53) であった.50歳以上の群が有意差は示さなかったものの高くなる傾向を示した.この結果はMahjobらが報告しているが,健常人での試験で年齢が高いほど肺動脈圧が上昇するという結果に一致していた. また,波形の明瞭度評価では,25Wから100Wにかけて75Wでは有意差を認めなかったが,その他においては有意差をもって信頼性がある傾向となった.
【結論】
健常人に対する運動負荷での三尖弁逆流の程度について,最大速度3m/sまでは病的意義はない可能性が高いと考えられた.今後,心疾患,肺疾患患者においても負荷による肺動脈圧変化の評価が安全に行えると考えられた.