小倉 文子¹, 田中 恵美子¹, 竹内 淑恵¹, 伊藤 隆英², 嶋本 新作², 野木 信平², 石坂 信和²

Fumiko OGURA¹, Emiko TANAKA¹, Yoshie TAKEUCHI¹, Takahide ITO², Shinsaku SHIMAMOTO², Shinpei NOGI², Nobukazu ISHIZAKA²

¹大阪医科大学中央検査部, ²大阪医科大学循環器内科

¹Department of Clinical and Laboratory Medicine, Osaka Medical College, ²Department of Cardiology, Osaka Medical College

キーワード :

【目的】
われわれは以前,組織ドプラ法に由来する時間速度曲線から①左室収縮能,②収縮遅延部位,③収縮遅延時間の3指標を示すことが可能なヘキサゴン解析（表示法）を提唱した（J Am Soc Echocardiogr 2008;21:1236,Echocardiography 2011;28:870）．しかしながら最近,スペックルトラッキング（ST）法によるdyssynchrony解析,さらにはseptal flashなどの異常心筋運動が,心臓再同期療法（CRT）の効果予測に有用であるとの報告が増えてきている．そこで本研究では,ST法から得られるtime-to-peak strain（TPS）をヘキサゴン解析に適用し,CRTの効果予測に生かせる否か検討を試みた．
【方法】
左脚ブロックを有する拡張型心筋症患者8名（W群）,左脚ブロックを有しない拡張型心筋症患者8名（N群）,健常者30名（NL群）を対象とした．左室乳頭筋レベル短軸像を記録し,オフラインにてradial strain解析を行った．短軸6分画（下壁,後壁,側壁,前壁,前壁中隔,中隔）から抽出される各ストレインカーブにおいて,拡張末期から1stピークまでの時間TPS をベクトルとみなし,各ベクトルの終点を6分画の解剖位置に一致するように放射状に配列した．ここで,6つのベクトルを統合したものをNet-delay（ms）,統合ベクトルの位置（角度）をLatest site（°）,ベクトルの終点を連結してできる6角形の面積を％Areaとし,これら3指標をcustom softwareを使用して算出,3群間で比較した．
【結果】
W群,N群,NL群におけるNet-delayはそれぞれ444±287,228±103,104±63（p ＜0.01）；％Areaはそれぞれ14±5,17±4,13±3（p ＜0.01）であった．また,Latest siteが側壁から後壁（60° -180°）に位置する患者の割合をW群とN群で比較すると,63％と25％（p=NS）であった．図は W群とN群のヘキサゴン表示である．W群におけるグラフ中央部の6角形は,中隔壁の部位が凹んでいるパターンが多かった．この凹みは,同部位の1stピークにあたる等容収縮期における心筋収縮（septal flash）に一致しており,こうしたケースでは例外なく後側壁の著明な収縮遅延を伴っていた．
【結論】
ST法によるヘキサゴン解析によると,①Septal Flashの有無,②収縮遅延部位,③収縮遅延時間の3指標を示すことが可能である．CRTの効果判定における本法の有用性については前向きな研究が必要である．