英文誌(2004-)
一般口演
循環器:心不全
(S382)
僧帽弁輪運動速波形を用いた左室駆出率が保持された心不全と心房機能不全の鑑別
Efficacy of mitral annular motion velocity in differentiation between left atrial dysfunction and heart failure with preserved ejection fraction
林 修司1, 山田 博胤1, 2, 冨田 紀子2, 發知 淳子2, 坂東 美佳2, 西尾 進1, 玉井 利奈1, 弘田 大智1, 平田 有紀奈1, 佐田 政隆1, 2
Shuji HAYASHI1, Hirotsugu YAMADA1, 2, Noriko TOMITA2, Junko HOTCHI2, Mika BANDO2, Susumu NISHIO1, Rina TAMAI1, Daichi HIROTA1, Yukina HIRATA1, Masataka SATA1, 2
1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院循環器内科
1Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital, 2Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital
キーワード :
【背景】
左室駆出率が保持された心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFPEF)においては,僧帽弁口血流速波形(TMF)の拡張早期波(E)と心房収縮期波(A)の比がE/A>1となることがあるが,左房収縮不全例においても同様のパターンを呈すことからその鑑別に苦慮することがある.そこで我々は,TMFがE/A>1を呈するHFPEF例(PN群),左房収縮不全例(LD群)および正常対照例(C群)における各種心エコー・ドプラ指標を比較し,その鑑別法について検討した.
【方法】
当施設において心エコー検査を施行した40歳以上,左室駆出率≧55%でTMFがE/A>1となる例を対象に,2011年11月から後ろ向きにPN群,LD群およびC群をそれぞれ連続30例抽出した.各群の診断は,肺静脈血流速波形や左室流入血流伝播速度,下肢陽圧試験などの負荷試験,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値および臨床所見を参考にした.心エコー検査では,左房および左室容積,左室心筋重量を計測し,TMFおよび中隔側の僧帽弁輪運動速波形を記録した.
【結果】
年齢,性別,血圧,左室心筋重量,左室駆出率は,3群間で差を認めなかった. PN群(p<0.001)とLD群(p<0.001) の左房容積係数は,C群に比しそれぞれ有意に大であった.E波高とE波の減速時間は3群間に有意差はなかったが,A波高はLD群においてPN群(p=0.032)とC群(p=0.016)に比し有意に小であった.PN群の拡張早期僧帽弁輪運動速波高(e’)はLD群とC群に比し有意に小であり, PN群のE/e’はLD群とC群と比べ有意に大であった.PN群とLD群の心房収縮期僧帽弁輪運動速波高(a’)は,C群と比べそれぞれ有意に小であり,PN群のA/a’はLD群およびC群に比し有意に大であった.PN群およびLD群におけるROC解析では,E/e’≧11.6で感度80%,特異度67%,A/a’≧6.6で感度83%,特異度57%,両基準を満たす場合は感度80%,特異度70%でPN群を鑑別することができた.
【結語】
PN群およびLD群はC群に比べ左房容積が有意に大で,a’が有意に小であることから診断可能であり,PN群とLD群の鑑別には,E/e’とA/a’が有用であった.