Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:症例2

(S375)

化学療法中の経時的変化を観察できた肺扁平上皮癌左房浸潤の一例

Left Atrial Invasion of the Lung Squamous Cell Carcinoma and its Therapeutic Change: A Case Report

繼 敏光1, 岩永 史郎2, 志賀 洋史1, 鈴木 淳司1, 中村 岩男1, 筒井 達也3, 市倉 美恵3, 大澤 一馬4, 峰松 直人4, 井上 宗信1

Toshimitsu TSUGU1, Shiro IWANAGA2, Hiroshi SHIGA1, Junshi SUZUKI1, Iwao NAKAMURA1, Tatsuya TSUTSUI3, Mie ICHIKURA3, Kazuma OSAWA4, Naoto MINEMATSU4, Soushin INOUE1

1日野市立病院循環器科, 2東京医科大学八王子医療センター循環器内科, 3日野市立病院臨床検査科, 4日野市立病院内科

1Department of Cardiology, Hino Municipal Hospital, 2Department of Cardiology, Tokyo Medical University, Hachioji Medical Center, 3Clinical Laboratory, Hino Municipal Hospital, 4Department of Internal Medicine, Hino Municipal Hospital

キーワード :

心臓では,原発性腫瘍に比べて転移性腫瘍がより多くみられる.悪性腫瘍の剖検例では1.5〜20.6%(平均6%)に心臓・心膜への転移が報告されている.特に肺癌の心臓転移は18〜36%と高率と報告されている.我々は肺扁平上皮癌が左上肺静脈を介して左房内に浸潤した症例を経験し,化学療法中の経時的変化を観察できた.症例は80歳女性.3ヵ月前より咳嗽を自覚し,胸部X線写真で左上肺野に無気肺を指摘されて,当院を受診した.胸部CTで左肺門部にリンパ節と一塊となった腫瘤(49×43 mm)があり,心エコー検査で左房内に可動性を持たない腫瘤(25×21 mm)を認めた.気管支鏡による生検で扁平上皮癌と診断され,carboplatinとpaclitaxelによる化学療法を開始した.2クール(2ヶ月間)を施行した後に画像診断を再確認したところ,左肺門部腫瘤は39×39 mmに縮小していた.逆に,左房内腫瘤は31×31 mmに増大していた.CTで腫瘤への血栓付着が疑われ,入院のうえ抗凝固療法を導入した.その後,心エコー検査で腫瘤内に低輝度領域が出現した.検査の翌日,トイレへの歩行中に意識消失し,死亡した.肺静脈浸潤を伴う肺門部肺癌は突然死の危険性が高いと報告されている.CTは肺静脈浸潤の診断感度がほぼ100%とされていて,早期発見に役立つ.しかし,その特異度は69%と低く,経食道心エコー検査を含めた心エコー検査が確定診断に重要となる.肺扁平上皮癌の左房浸潤に対して化学療法を行い,腫瘤の性状変化を観察できた貴重な症例を報告する.