Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:症例1

(S373)

僧帽弁輪石灰化に付着する可動性構造物が認められた一症例

Mobile components associated with mitral annulus calcification:a case report

飯塚 智子1, 太田 哲郎1, 岡田 清治1, 広江 貴美子2, 角 瑞穂2, 清水 弘治3, 織田 禎二3, 吉田 学4, 丸山 理留敬5, 村上 林兒1

Tomoko IIZUKA1, Tetsuro OHTA1, Seiji OKADA1, Kimiko HIROE2, Mizuho SUMI2, Kouji SHIMIZU3, Teiji ODA3, Manabu YOSHIDA4, Riruke MARUYAMA5, Rinji MURAKAMI1

1松江市立病院循環器内科, 2松江市立病院中央検査科, 3島根大学医学部付属病院心臓血管外科, 4松江市立病院臨床検査科, 5島根大学医学部器官病理学

1Cardiovascular Medicine, Matsue City Hospital, 2Central Clinical Laboratory, Matsue City Hospital, 3Cardiovascular Surgery, Shimane University Hospital, 4Clinical Laboratory Department, Matsue City Hospital, 5Organ Pathology, Shimane University Faculty of Medicine

キーワード :

僧帽弁輪石灰化(MAC)合併患者の脳梗塞のリスクは2-5倍高く,石灰化した構造物または血栓性の塞栓子が脳血管疾患の原因となる可能性が報告されている.今回われわれは急性心筋梗塞の経過中にMACに付着する可動性構造物が認められた症例を経験したので報告する.症例は78歳の女性.急性下壁心筋梗塞を発症し入院.一ヶ月後に経過観察のため実施した経胸壁心エコーで左室内に可動性構造物が認められた.発作性心房細動のためワーファリンが投与されておりPT-INR=1.9で,炎症反応やD-ダイマーの上昇は認められなかった.経胸壁心エコーでは僧帽弁輪の後尖側に径20mmの嚢胞状の石灰化が認められ,その石灰化に付着する疣贅様の可動性構造物(16×12mm)が認められた.経食道心エコーの四腔像では,可動性の構造物は僧帽弁輪後尖周辺の石灰化による音響陰影のために一部しか描出できなかった.3次元経胸壁心エコーでは僧帽弁輪後尖側に塊状の高輝度な構造物とそれに付着する疣贅様の構造物が描出された.3次元画像を多方向から観察することで立体的な形態が明瞭となり,疣贅様の構造物は先端が数個に分かれて一部ひも状であることが観察された.造影CTでは僧帽弁輪後尖側に表面に石灰化を有する嚢胞状の構造物が認められ,3次元画像では嚢胞状の石灰化が弁輪の石灰化に連続しているのが観察された.可動性のある疣贅様の構造物は塞栓源となる可能性があると考えられ,心臓血管外科へ紹介し緊急手術が実施された.術中所見では僧帽弁後尖に著明な肥厚が認められ,術前に観察された疣贅様の可動性構造物は認められなかった.僧帽弁後尖の弁輪部から左室側に腫瘤が認められ,切開をすると膿汁様の液体の流出が認められた.病理組織では腫瘤の被膜は大小の石灰化の結節が島状に点在しており,内部には異物反応と考えられる組織球の侵潤と肉芽腫形成が認められた.手術時に認めた膿汁様の液体は培養陰性でCaseous Calcification of the Mitral AnnulusまたはLiquefaction Necrosis of Mitral Annular Calcificationとして報告されているMACに伴う病態と考えられた.また,その辺縁にはフィブリンの沈着を認めていたことから器質化した血栓の存在が示唆され,術前に認められた疣贅様の可動性構造物は石灰化に付着した血栓と推察された.