Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:その他

(S369)

心室中隔基部肥大の実態とその臨床的意義

Localized basal septal hypertrophy:prevalence and clinical implication

坂部 博志2, 坂本 奈津美2, 土方 とも子2, 米村 里美2, 諏訪 道博1, 木野 昌也1

Hiroshi SAKABE2, Natsumi SAKAMOTO2, Tomoko HIJIKATA2, Satomi YONEMURA2, Michihiro SUWA1, Masaya KINO1

1北摂総合病院循環器科, 2北摂総合病院臨床検査科

1Department of Cardiology, Hokusetsu General Hospital, 2Clinilal Laboratory, Hokusetsu General Hospital

キーワード :

【はじめに】
高齢者の心室中隔の様相として,S字状中隔が問題とされる事が少なくない.一方S字状中隔に酷似しているが明らかな心室中隔基部に限局した肥大(以下中隔基部肥大)を示し区別すべきであろう症例も経験する.この中隔基部肥大は,様々な報告で議論されており,高齢者に多い,肥大型心筋症の亜型であるなどの報告もなされている.今回,この中隔基部肥大について当院での現状と患者背景との関連について調査したので報告する.
【方法と調査期間】
2-D計測を中心とした中隔基部肥大の診断基準を定め,2010年1月から2011年4月の期間中の全心エコー検査患者中,それに合致する患者に関連する背景などについて調査した.
【結果】
集計期間中の全心エコー検査患者数は1794件,そのうち定めた基準に合致する患者は62名であった.基部壁厚の平均値は15.8mmで,年代別の割合は50代以下が0.1%であり,以降加齢によりその割合は増加し90代以上は6.6%であった.基部壁厚の増加と安静時左室流出路最大血流速の関係については,基部壁厚の増加に伴う,左室流出路最大血流,最大圧較差の増大は比例しなかった.しかしValsalva負荷での左室流出路最大血流速,圧較差は,安静時に比較し増大したものが48%,変化なしを含めると約70%にのぼり,潜在的な圧較差の存在が示唆された.また血圧については80%で何らかの高血圧の既往,治療歴がある事が判明した.
【まとめ】
中隔基部肥大は加齢によるものに加えて,高血圧による圧負荷が背景に存在する可能性がある.中隔基部肥大の程度による安静時の左室流出路の流速についてはそのほとんどが正常値であるが,Valsalva負荷により,流出路に圧較差の存在が示唆されことから,急激な前負荷の減少を伴う処置,手術などを行う際には,急激に血圧低下を引き起こす要因となる可能性があるので留意する必要がある.したがってS字状中隔と診断する場合は,中隔基部肥大の有無と流出路の圧較差の存在についても確認する必要がある.