Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:左室機能

(S369)

左室長軸方向へのストレイン変化は運動耐容能を規定する

Left ventricular longitudinal strain defined as the exercise capacity

野上 佳恵1, 瀬尾 由広1, 石津 智子1, 亀田 有里2, 酒巻 文子3, 谷中 里美3, 山本 昌良1, 川村 龍1, 青沼 和隆1

Yoshie NOGAMI1, Yoshihiro SEO1, Tomoko ISHIZU1, Yuri KAMEDA2, Fumiko SAKAMAKI3, Satomi YANAKA3, Masayoshi YAMAMOTO1, Ryo KAWAMURA1, Kazutaka AONUMA1

1筑波大学医学医療系 臨床医学域, 2筑波大学大学院人間総合科学研究科 フロンティア医科学専攻, 3筑波大学附属病院検査部

1Faculty of Medicine, Division of Clinical Medicine, University of Tsukuba, 2Master’s Program in Medical Sciences, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, 3Department of Clinical Laboratory, Tsukuba University Hospital

キーワード :

【背景】
安静時における左室弛緩機能やねじれなどが運動耐容能を規定する重要な因子であることが報告されている.本研究の目的は,運動時の左室心機能増加予備力や運動時の左室壁運動が運動耐容能を規定するのか検討することである.
【方法】
対象は健常ボランティア15名(健常群;58±13歳)と心疾患患者6名(疾患群;75±3歳)とした.運動は事前に症候限界性ランプ負荷運動を行い,その後運動負荷心エコーを行った.心機能は,心尖部四腔像にて組織ドプラ(TDI)および2Dスペックルトラッキング法を用いて長軸方向のストレイン変化を評価した.
【結果】
健常群におけるS’およびE’は安静時からピーク負荷時において有意に増加した(S’, 8.8±1.9 vs. 12.4±2.0 cm/s, P<0.01; E’, 10.6±2.2 vs. 17.6±4.2 cm/s, P<0.01).疾患群においてS’は有意に大となったが(8.4±1.2 vs. 10.2±1.7 cm/s, P<0.05),E’は有意な増加を認めなかった(7.6±2.6 vs. 11.0±2.9 cm/s).健常群におけるlongitudinal strain(LS)はピーク負荷時に上昇する傾向を認め(-12.0±2.0 vs. -14.0±2.4 %, P=0.06),LS rate (LSR)は有意に上昇した(-0.59±0.1 vs. -1.03±0.1 1/s, P<0.01).一方,疾患群においてはLSおよびLSRともに有意な変化を認めなかった(LS; -12.2±3.2 vs. -12.6±1.9 %, LSR;-0.66±0.2 vs. -0.83±0.1 1/s).また,ピーク負荷時におけるS’(r=0.48, P<0.05),E’ (r=0.66, P<0.01),LS(r=-0.57, P<0.05)およびLSR(r=-0.66, P<0.01)(図)は最高酸素摂取量(peakVO2)と有意な相関関係を認めた.さらに,ステップワイズ回帰分析ではLSRがpeakVO2の独立規定因子として選択された(P<0.01).
【結論】
疾患群に比べ健常群におけるE’の運動負荷時に増加できる予備力が大きいことが示された.さらにS’,E’,LSおよびLSRとpeakVO2の有意な関連が認められたことから,左室長軸方向への変化が運動耐容能を規定する一因になっていると考えられる.