Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:その他

(S368)

Duchenne型筋ジストロフィーにおける機能的僧帽弁逆流と左房径の関係について

Relationship between functional mitral regurgitation and left atrial size in Duchenne Muscular Dystrophy

山本 哲志1, 田中 秀和2, 松本 賢亮2, 漁 恵子2, 今西 孝充1, 林 伸英1, 竹島 泰弘3, 川合 宏哉2, 河野 誠司1, 平田 健一1, 2

Tetsushi YAMAMOTO1, Hidekazu TANAKA2, Kensuke MATSUMOTO2, Keiko RYOU2, Takamitsu IMANISHI1, Nobuhide HAYASHI1, Yasuhiro TAKESHIMA3, Hiroya KAWAI2, Seiji KAWANO1, Ken-ichi HIRATA1, 2

1神戸大学医学部付属病院検査部, 2神戸大学大学院医学研究科循環器内科学分野, 3神戸大学大学院医学研究科小児科学分野

1Clinical Laboratory, Kobe University Hospital, 2Internal Medicine, Division of Cardiovascular Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine, 3Pediatrics, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
機能的僧帽弁閉鎖不全症(FMR)は,左室拡大に伴う乳頭筋の外方変位と左室収縮力の低下によって生じるとされている.Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)の進行例では,左室は後壁を中心に高度なリモデリングを生じ,拡張型心筋症様の変化を来たすため,しばしばFMRを合併する.しかしながら,DMD患者におけるFMR発生因子の関与については明らかにされていない.今回我々は左室拡大を呈したDMD症例を対象に,合併するFMRとその発生に関連する因子について検討した.
【方法】
当院で遺伝子検査にてDMDと確定した症例のうち左室拡張末期径が50mm以上と拡大を呈した28例(16.5±4.7歳)を対象とした.全例に経胸壁心エコー図検査を施行し,左室径,左房径,左室内径短縮率(%FS),僧帽弁逆流の有無,ならびに傍胸骨左室長軸像より僧帽弁のtetheringの指標としてtenting area(TA)とtenting height(TH)を測定した.また,検査時の収縮期血圧と脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)も測定した.なお体格差を考慮し比較検討には左室径と左房径を体表面積で除した値を用いた.
【結果】
DMD患者の28例中14例にFMR を認めた(軽度11例,中等度2例,高度1例). FMR を有する群はFMR を認めない群に比して,左室拡張末期径,左室収縮末期径,TA,左房径が有意に大きかったが,%FS,収縮期血圧,TH,BNPでは有意差が認められなかった.ロジスティック単回帰分析を行うと,FMRの有無は左室拡張末期径,左室収縮末期径,TAおよび左房径と有意な相関関係を認めたが,収縮期血圧,TH,BNPとは有意な相関関係を認めなかった.ロジスティック重回帰分析を行うと左房径のみがFMRの有意な独立した規定因子であった.
【結語】
通常成人の不全心で観察される病態とは異なり,左室拡大を呈したDMD症例においては,FMRに関与している因子は僧帽弁のtetheringでなく左房拡大であった.