Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:薬

(S366)

心エコーによる乳がん化学療法中の左室心機能の評価-トラスツマブと他の薬剤での検討-

Evaluation of left ventricular function by echocardiography in breast cancer patients receiving chemotherapy with Trastuzumab and other drugs

中嶋 真一1, 山岸 俊夫2, 平川 久3

Shinichi NAKASHIMA1, Toshio YAMAGISHI2, Hisashi HIRAKAWA3

1東北公済病院生理検査室, 2東北公済病院内科, 3東北公済病院乳腺外科

1Physiological laboratory, Tohoku Kosai Hospital, 2Department of Internal Medicine, Tohoku Kosai Hospital, 3Department of Breast Surgery, Tohoku Kosai Hospital

キーワード :

【目的】
乳がん化学療法において用いられるトラスツマブには,長期投与に伴う心機能障害が報告されている.今回心エコー検査によりトラスツマブ投与中の乳がん患者における心機能評価に関し検討した.
【方法】
当院にて2006年8月から2011年2月までに化学療法中の心機能の経過観察目的で3回(平均12カ月以内)以上心エコー検査を行った乳がん患者51名(平均年齢53±9才)を対象とした.トラスツマブを投与された乳がん患者29名(T群)と,比較対象としてエピビルシン,タキソテール等のトラスツマブ以外の抗がん剤が投与された乳癌患者22名(非T群)の二群に分け,投与前,抗がん剤投与後1回目検査,2回目検査での左室駆出率(EF),大動脈弁位での一回心拍出量(AVSV),心拍出量(CO),Tei index,左室流入血流速波形E/A比,組織ドプラ法で計測した僧帽弁輪運動速度e’,E/e’に加え,2D Speckle tracking(2DST) 法によるGlobal Longitudinal Strain (GLS)にて評価を行った.2DST解析はGE healthcare 社のVivid E9 にて行った.記録時Frame rate 60(±14)fpsであった.データは平均±標準偏差で表記し,p<0.05を有意とした.
【結果】
全例の解析では,投与前,1回目,2回目検査時でEFは有意に低下した(ANOVA, p<0.01).またT群でもEFは有意に低下(投与前70.7±7.0 %,1回目69.6±6.3 %,2回目65.7±8.0 %)し,2回目のEFは,投与前,1回目と比較して有意に低下し,1回目より2回目の方のEFの低下度が大きくなっていた.一方,非T群では,EFはANOVAによる解析では有意な低下を認めなかったが,2回目のEFは,投与前に比し有意に低下していた(投与前72.7±5.7 %,2回目66.7±12.8 %).またT群において2回目のGLSは,投与前に比し有意な低下を認めた(-22.3±1.9 % vs. -20.3±1.1 %).また拡張機能では,e’が減少傾向で,E/e’が増加傾向であったが有意な変化ではなく,他の指標も同様であった.
【結論】
乳がん患者の抗がん剤投与による心機能への影響は,1回目投与よりも2回目以降の方がより明らかになった.またトラスツマブ投与中の乳がん患者では,長期投与となるにつれ,他の抗がん剤と比較して,収縮機能を主体とした心筋障害が比較的早く進行することが示唆され,その指標としてEFの他に,GLSでの評価も有用であると考えられた.