Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:薬

(S366)

左室駆出率が保たれたアントラサイクリン系薬剤使用症例における左室心内膜機能障害

Endocardial Dysfunction in Patients with Preserved Ejection Fraction After Anthracycline Therapy by Three-Dimensional Speckle-Tracking Strain Imaging

三好 達也1, 田中 秀和1, 松本 賢亮1, 金子 明弘1, 辻 隆之1, 漁 恵子1, 辰巳 和宏1, 南 博信2, 川合 宏哉1, 平田 健一1

Tatsuya MIYOSHI1, Hidekazu TANAKA1, Kensuke MATSUMOTO1, Akihiro KANEKO1, Takayuki TSUJI1, Keiko RYO1, Kazuhiro TATSUMI1, Hironobu MINAMI2, Hiroya KAWAI1, Ken-ichi HIRATA1

1神戸大学大学院医学研究科内科学講座循環器内科学分野, 2神戸大学大学院医学研究科内科学講座腫瘍血液内科学分野

1Division of Cardiovascular Medicine, Department of Internal Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine, 2Division of Medical Oncology/Hematology, Department of Internal Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
アントラサイクリン系の抗腫瘍薬は,容量依存性に心筋障害を引き起こすことは以前から知られている.しかし化学療法終了後に左室駆出率が保たれた症例における,アントラサイクリン系薬剤による左室心筋障害についての検討は十分になされていない.近年開発された3次元スペックルトラッキング法は,従来の2次元法とは異なり,左室全16領域の局所心筋機能が同一心拍で評価できるため様々な利点がある.また,3次元スペックルトラッキング法は心内膜面の局所面積変化率(Area strain)の測定が可能であり,Circumferential strainとLongitudinal strainの両方の成分を持つ新しい指標と考えられ,左室心内膜機能の評価が可能になった.
本研究の目的は,アントラサイクリン系薬剤使用後に,左室駆出率が保たれている症例において,3次元スペックルトラッキング法によるArea strainを用いて,左室の心内膜障害を検討することである.
【方法】
対象は過去にアントラサイクリン系薬剤を使用した患者15例(左室駆出率63±5%,総投与量315±163mg/m2)と,左室駆出率をマッチさせた正常群15例(左室駆出率 65±3%)である.左室全体の収縮能の指標として左室駆出率を,左室全体の拡張能の指標として,拡張早期の僧帽弁血流速度と僧帽弁輪速度の比(E/E’)を測定した.また,左室全16領域から算出したglobal area strainのピーク値を左室心内膜機能の指標とした.
【結果】
アントラサイクリン系薬剤使用群と正常群において,左室収縮能(左室駆出率:63±5% vs. 65±3%),および拡張能(E/E’: 7.5±1.3 vs. 8.6±3.3)に有意差は認めなかった.一方,global area strainは,アントラサイクリン系薬剤使用群で有意に低下していた(41.1±3.7% vs. 44.7±3.8%, p=0.016).
【結論】
左室全体の機能が保たれていても,アントラサイクリン系薬剤使用により左室心内膜障害が認められることが,3次元スペックルトラッキング法によるArea strainを用いて観察された.この指標を用いることにより,アントラサイクリン系薬剤による,将来的な左室収縮能,拡張能低下を予想する可能性がある.