Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:薬

(S365)

拡張不全モデルラットに対するロサルタン単独治療効果と利尿薬併用治療効果の検討

Effect of Combination of Losartan and Hydrochlorothiazide on Diastolic Heart Failure in Dahl Salt Sensitive Rat

足立 哲哉, 増田 佳純, 浅沼 俊彦, 中谷 敏

Tetsuya ADACHI, Kasumi MASUDA, Toshihiko ASANUMA, Satoshi NAKATANI

大阪大学大学院 医学系研究科機能診断科学講座

Division of Functional Diagnostics, Osaka University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
駆出率の保たれた心不全(拡張不全)は,予後が悪いにも関わらず,その発症過程・治療戦略は不明である.アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)はレニン・アンギオテンシン系を介した降圧作用以外に成長因子阻害に基づく心筋リモデリング抑制効果,線維化抑制効果などの心保護作用を持ち,高血圧が発症に関与しているとされる拡張不全の治療薬として期待が持たれている.近年,ARBとサイアザイド系利尿薬であるヒドロクロロチアジド(HCTZ)との合剤がARB単独よりも強力な降圧薬として使用されるようになったが,拡張不全に対するその効果は十分には知られていない.
【目的】
拡張不全を発症したDahl食塩感受性ラットにおけるARB(ロサルタン)単独療法とHCTZを組み合わせた併用療法の治療効果を検討すること.
【方法】
Dahl食塩感受性ラット18匹に対して,既報にしたがって生後5週齢より高食塩食(8%NaCl)を与えることにより拡張不全を作成した.血圧の上昇が見られた8週齢からの介入内容により,無治療群(n = 6),ロサルタン(30 mg/kg/day)単独群(n = 6),ロサルタン(30 mg/kg/day)+HCTZ(10 mg/kg/day)併用群(n = 6)の3群に分類した.血圧,心エコー図検査(GE社製Vivid 7,10s型プローブ)を5週齢,8週齢,17週齢において行い,左室壁厚・内径,左室心筋重量/体重(LVmass/BW),左室内径短縮率(%FS),左室流入速波形(E波,A波)及び,僧帽弁輪部速度拡張早期波(e’)を計測した.死亡時もしくは17週経過後,心臓を摘出し,マッソントリクローム染色を行い,心筋線維化面積率を測定した.
【結果】
無治療群では慢性期(13週齢)において,%FSは保たれていたものの,(8週vs. 13週: 50.5±8.8 vs. 48.3±5.1%, p = 0.68),e’が低下しており(3.8±0.2 vs. 2.9±0.1 cm/s, p < 0.05)拡張不全の発症が確認された.17週齢時の生存率は無治療群で0%,単独群及び併用群で100%であった.週齢が上がるにつれ,単独群において血圧は有意に上昇し,LVmass/BWは上昇傾向が見られ,e’は有意に低下した(8週vs. 17週: 収縮期血圧; 163±9 vs. 193±14 mmHg, p < 0.05, LVmass/BW; 2.9±0.3 vs. 2.9±0.2, p = 0.65, e’; 3.8±0.2 vs. 3.3±0.2 cm/s, p < 0.05).併用群において血圧の上昇は抑えられ,LVmass/BWは有意に低下し,e’は保たれた(収縮期血圧; 172±8 vs. 174±10 mmHg, p = 0.81, LVmass/BW; 3.0±0.3 vs. 2.7±0.2, p < 0.05, e’; 3.9±0.4 vs. 3.5±0.5 cm/s, p = 0.17).心内膜の線維化は3群全ての間に有意な差が認められ,無治療群で15.4±1.5%,単独群で7.6±0.6%,併用群で5.1±0.5%であった.
【結語】
ARBは拡張不全モデルラットに対して心筋線維化抑制効果及び,生存率改善効果を示したが,利尿薬の併用によりさらに一層強力な降圧効果,拡張障害抑制効果,線維化抑制効果を示した.