Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:薬

(S365)

高血圧症患者における左室拡張能改善とアルドステロン濃度の関係:左房径を用いた検討

The Role of Plasma Aldosterone Concentration in Hypertensive Patients.

正木 充1, 合田 亜希子2, 廣谷 信一2, 吉田 千佳子1, 大塚 美里2, 中坊 亜由美2, 川端 正明2, 戌角 幸治3, 小柴 賢洋3, 増山 理2

Mitsuru MASAKI1, Akiko GOUDA2, Shinichi HIROTANI2, Chikako YOSHIDA1, Misato OTSUKA2, Ayumi NAKABOU2, Masaaki KAWABATA2, Kouji INUZUMI3, Masahiro KOSHIBA3, Tohru MASUYAMA2

1兵庫医科大学循環器内科/臨床検査部, 2兵庫医科大学循環器内科, 3兵庫医科大学臨床検査医学

1Cardiology / Clinical Laboratory Medicine, Hyogo College of Medicine, 2Cardiology, Hyogo College of Medicine, 3Clinical Laboratory Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

【背景・目的】
左室拡張能の指標は,左室流入血流速波形,肺静脈血流速波形,左房の大きさ等がある.左室流入血流速波形や肺静脈血流速波形は,瞬時の左房圧上昇を反映する指標であるのに対し,左房の大きさは,慢性的な左房圧上昇を反映する指標である.たとえば,I-PRESERVEのサブ解析で,左房容積の増大が拡張期心不全患者において死亡率や罹患率を増加させる因子の一つであることが報告され,左房の大きさが左室拡張能のもっとも重要な指標の一つであることが示されている(Circulation; 124:2491-2501).一方,高血圧心における心筋肥大や心筋線維化の退縮に血漿アルドステロン濃度が大きく関与していることを私たちは明らかにしてきた.本研究では,未治療高血圧症においてカルシウム拮抗薬およびアンジオテンシン受容体拮抗薬の長期連用に伴う左室拡張能の変化を左房径により評価し,これと血漿アルドステロン濃度との関係を検討した.
【方法】
未治療高血圧症38人(男性26人,女性12人,平均年齢は60±12才)を対象とした.全例を無作為にカルシウム拮抗薬群 : 19人 (アムロジピン : 5〜10mg/day)とアンジオテンシン受容体拮抗薬群 : 19人 (イルベサルタン : 100〜200mg/day)に割り付け,収縮期血圧/拡張期血圧:140/90mmHgを目標に治療を行った.治療前・治療開始6ケ月・12ヶ月後に 収縮期血圧,心エコー 左房径係数 (LADI),血漿アルドステロン値 を測定した.
【結果】
全症例の平均収縮期血圧は,治療開始前の160 ± 20mmHgから治療開始12カ月後130 ± 14 mmHgへと優位な降圧効果が得られた.カルシウム拮抗薬群,アンジオテンシン受容体拮抗薬群の間に降圧の程度に差を認めなかった.LADI,血漿アルドステロン値の治療に伴う変化率を比較したところ,いずれもカルシウム拮抗薬群よりアンジオテンシン受容体拮抗薬群でより減少した.(-15.2 ± 11.9 vs. 19.3 ± 10.7 %, p<0.05, -5.1 ± 2.3 vs. 2.3 ± 2.5 %, p<0.05).アンジオテンシン受容体拮抗薬群では,LADI変化率と血漿アルドステロン値変化率との正の相関を認めたが(r= 0.58, p<0.05),カルシウム拮抗薬群では相関を認めなかった.
【結語】
高血圧症患者において,アンジオテンシン受容体拮抗薬による降圧治療は血漿アルドステロン濃度低下および左房のリバースリモデリング(縮小)をもたらした.また,左房のリバースリモデリングは,血漿アルドステロン値の低下に伴う左室拡張能改善に関連することが示唆された.