Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
循環器:携帯エコーなど

(S362)

在宅医療における携帯用エコー装置の使用経験

Clinical Validity of Portable Ultrasound System in Home Health Care

鬼平 聡1, 石田 秀明2, 伊藤 宏3

Satoshi KIBIRA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroshi ITO3

1きびら内科クリニック内科, 2秋田赤十字病院消化器内科, 3秋田大学医学部循環器内科学・呼吸器内科学分野

1Internal Medicine, Kibira Medical Center, 2Department of Medical Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 3Division of Cardiovascular and Respiratory Medicine, Akita University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
2004年からフクダ電子社製FFソニックUF-750XT,2011年よりGE社製Vscanを在宅診療で使用しており,その有用性を報告する.
【使用装置】
フクダ電子社製FFソニックUF-750XTおよびGE Healthcare Vscan
【対象と方法】
2004年1月から2011年11月において,ターミナルケアを含む在宅診療患者77例中44例にて在宅でのエコー検査を施行した.検査目的としては1)心血行動態の把握や呼吸困難・呼吸状態悪化の原因検索,2)腹痛・腹部膨満・黄疸の原因検索,3)発熱の原因精査,などであった.
【結果】
1)については胃癌および大腸癌末期の2症例で大量胸水を認め,呼吸困難の原因を確認できた.慢性呼吸不全の1例では右室拡大所見の進行を認め,肺性心悪化と診断し緊急入院とした.なお4例において,胸水貯留や下大静脈拡大所見が心不全増悪の評価に有用であった.一方,低栄養・脱水による心腔虚脱所見から胃瘻導入にふみきった1症例も経験した.2)黄疸をきたした1症例にて,肝内胆管拡大が確認可能で,胆管癌の診断をえた.腹痛・発熱の一例では急性胆嚢炎による胆嚢腫大および胆嚢壁の一部菲薄化を認め,緊急入院とした.また下腹部膨満の5例にて,1例では腸閉塞を,また4例では尿閉による膀胱拡大を容易に確認でき,尿道カテーテル導入で症状は消失した.3)繰り返す発熱の原因精査でUSを施行,右側胸腔内に著明なフィブリン析出・細胞成分に富む胸水貯留を認め,膿胸を疑い入院,ドレナージ排膿で著明改善した1例を経験した.
【まとめ】
FFソニックUF-750XTはPW, CWドプラや各種計測機能を有し,機能的に優れていたが,重量が13kgと重く,かつプローブ2本を携帯する必要があり,装置の運搬に労力を要した.一方,Vscanは390gと超軽量・コンパクトであり,プローブも一本のみながら心臓・腹部臓器に対応可能で,往診に際し容易に持ち歩くことができ,利便性の点で極めて優れていた.その断層像・カラードプラ画像は在宅臨床において充分有用であったが,ドプラ波形の記録は不能であり計測機能も距離計測等に限られる,動画記録時間が2秒と短かく,動画取り込み中は画面に静止画のみ表示される,カラードプラのフレームレートが低く,頻拍例の逆流評価に難がある,などの問題点もあり,これらの限界も踏まえて使用する必要がある.