Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状

(S359)

血管を考慮した振幅分布モデルに基づく肝炎線維化評価指標の検討

Quantitative Estimation for Liver Fibrosis Using Rayleigh Mixture Model with Blood Vessel Component

樋口 達矢1, 山口 匡2, 蜂屋 弘之1

Tatsuya HIGUCHI1, Tadashi YAMAGUCHI2, Hiroyuki HACHIYA1

1東京工業大学大学院理工学研究科, 2千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター

1Graduate School of Science and Engneering, Tokyo Institute of Technology, 2Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【目的】
正常肝からの超音波エコー信号の振幅分布はレイリー分布で近似できるが,びまん性肝疾患では,病変進行に伴い組織構造が変化し,振幅分布がレイリー分布から逸脱していく [1].我々は,線維組織と正常組織のそれぞれに対応する二つのレイリー分布を組み合わせた分布モデルを提案し,病変肝の振幅分布を精度よく近似できる事を示し,このモデルを用いた肝炎線維化の定量化を行い良好な結果を得た[2].しかし, ROI中に線維・正常組織に加え,血管が多く含まれる場合にはこのモデルでは近似精度が悪くなるため,これを考慮したモデル化が必要である.本報告では線維組織,正常組織に加え,血管に対応する分布を組み合わせた振幅分布関数を用いて病変肝の振幅分布をモデル化し,そのパラメータと組織構造との関係の検討を行った結果を示す.
【方法】
線維組織,正常組織,血管からのエコー信号の振幅分布をそれぞれ高分散,中分散,低分散のレイリー分布で表現し,それらを組み合わせることで病変肝の振幅分布特性を表現する.線維化の程度がF0からF4までの肝病変の各段階に対応した臨床データに対し,二つの分布関数の差を定量化するKL情報量によるモデル近似精度評価,および組織構造とモデルパラメータの関係性の検討を行う.モデルパラメータの検討では,先行研究における二つのレイリー分布を組み合わせたモデルとの比較を行い,病変進行度定量化や血管部位特定の可能性を考察する.
【結果】
臨床データを用いたモデル近似精度評価の結果,ROI中に血管を多く含む場合でもモデルとデータの振幅分布間のKL情報量が十分に小さくなり,モデルの近似精度が,肝全体にわたりよいことがわかった.モデルパラメータによる検討により,病変進行とともに正常部と線維部の分散パラメータの比が大きくなっていき,線維化の程度を評価できることがわかった.また,ROI中に血管を多く含む場合でも,線維の量,線維化進行の程度を安定に評価できることがわかった.以上の結果から,びまん性肝疾患の組織構造を分離して評価でき,病変進行度を定量化できることが示された.
【参考文献】
[1]T. Yamaguchi, H. Hachiya, Jpn. J. Med. Ultrasonics, 37(4) 155 ( 2010).
[2]Y. Igarashi, et. al., Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 49, 07HF06(6pages), (2010).