Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状

(S357)

異方性効果を利用した組織性状診断の基礎検討

Preliminary study for tissue characterization with anisotropic effect

金山 侑子1, Gérini Henri2, 神山 直久1

Yuko KANAYAMA1, Henri GÉRINI2, Naohisa KAMIYAMA1

1東芝メディカルシステムズ株式会社超音波臨床応用研究開発グループ, 2Department of Radiology, Cochin Hospital

1Ultrasound Application & Research Group, Toshiba Medical Systems Corporation, 2Department of Radiology, Cochin Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波画像診断は,近年における画質向上により,筋肉や骨表面といった整形外科分野などでの活用も増加している.超音波診断の特長としては,軟部組織の微細変化の観察や,動きのリアルタイム観察などが挙げられるが,一方で,画像の客観性の問題や,画像自体に慣れが必要といった課題も知られている.ところで,腱などの方向性を持つ組織においては,超音波の入射角度によってその輝度が異なるといった現象(異方性効果)が知られている.これは,腱の線維構造では超音波ビームが等方的に散乱しないことが理由である.この異方性効果は,損傷や炎症により線維構造が破壊されると減少すると考えられ,今回はこれを利用した組織性状診断を行う手法を検討した結果を報告する.
【手法】
試作装置はAplioXGTM.画像取得ボタンを入力すると,リニア型プローブにおける送受信方向を5°pitchでフレームごとに変更し,±30°計13枚を瞬時に記録できる.各画像のゲイン設定値は,異方性が無いと仮定できる生体擬似ファントム(RMI 403GS; 0.5dB, GAMMEX)において,予めキャリブレーションされている.対象は腱に異常を認めた被験者10名で,疾患はtendinopathy, tendinitis, 炎症による浮腫などであった.上述の方法で画像を取得後,PCに転送.異常部分と正常部分を目視で確認後,各領域にROIを設定し,専用ソフトImageLabで信号強度解析を行った.異方性があればフレーム間の変化は上に凸の曲線が予想されるが,ここで,異方性指標値として,最大値と,最大値から15°異なる角度における信号値との差dI15を使用した.
【結果】
正常部と異常部の輝度の角度依存性の一例をFig. 1に示す.正常部では送信ビーム角度5°をピークとする異方性効果が観察されるのに対し,異常部では輝度のピークが見られない.Fig.2は全症例におけるdI15を正常部と異常部ごとにプロットした図である.T検定によると,両者には有意差が認められた(p < 0.01).
【まとめ】
本手法により,腱構造の質的変化の定量化の可能性が示唆された.映像化法と組み合わせることによって,腱の損傷・炎症の部位を簡便に可視化できることが期待される.