Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:弾性計測

(S354)

生体疑似ファントムを用いたずり波計測における温度上昇に関する検討

Temperature Rise for Shear Wave Measurement by using Tissue-mimicking Phantom

田原 麻梨江, 浅見 玲衣, 吉川 秀樹, 東 隆, 橋場 邦夫

Marie TABARU, Rei ASAMI, Hideki YOSHIKAWA, Takashi AZUMA, Kunio HASHIBA

日立製作所中央研究所

Central Research Laboratory, Hitachi, Ltd.

キーワード :

【背景】
近年,肝臓や乳腺疾患において,集束超音波を放射し,その放射力によって組織に力を与えた後,生体からの応答を検出して定量的な硬さを計測する方法が発展してきている.まず,放射力のON/OFFによって組織を変位させ,ずり波を励起する.次に,超音波送受信によりずり波の振幅値を検出してずり波速度を推定する.高精度なずり波計測のためには強い超音波強度,長い照射時間で大きなずり波変位を得る.一方,強い超音波強度や長い照射時間で照射する場合,従来の撮像法に比べて生体内の温度上昇が大きくなる問題点がある.本研究では,ずり波計測に必要な集束超音波の照射条件,および,安全性を満たすための集束超音波の照射条件について検討する.
【方法】
まず,超音波診断装置で観測するため,生体組織擬似ファントム(0.3 dB/MHz/cm,ずり波速度3 m/s)を作製した.図1のようにずり波発生用の集束型トランスデューサ,ファントム,ずり波検知用リニアアレイプローブを水槽内に設置し,集束超音波を最大2 ms照射した.超音波の照射後,ずり波の伝搬方向に沿った複数の位置においてずり波の変位を計測し,ずり波最大振幅値と距離伝搬減衰係数を調べた.次に,集束超音波を照射したときの焦点における温度上昇を熱伝対で計測した.
【結果】
ずり波の減衰係数は0.6 dB/mmであった.細動脈の振動による変位検出分解能を0.05 μm,撮像視野を5 mm,焦点深度を30 mm,中心周波数を6 MHzとした場合,十分な計測精度を得るには,超音波強度5 kW/cm2の場合,0.1 ms以上の照射時間が必要であることがわかった.このとき,照射時間間隔を1秒,撮像時間を60 秒とした場合,安全性基準である1°Cを超えない照射時間は0.3 ms以下であった.また,照射時間を1 msと固定した場合には,ずり波計測に必要な超音波強度は2.5 kW/cm2以上であるのに対し,安全基準値を超えない超音波強度は0.5 kW/cm2以下であった.
【結論】
安全性とずり波検出精度はトレードオフの関係にあることを確認した.今後,実験と音響解析により,安全なずり波計測に必要な集束超音波の照射条件と照射時間間隔について検討する.