Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:弾性計測

(S353)

血流依存性血管弛緩反応時の橈骨動脈壁粘弾性特性変化の超音波計測

Ultrasonic Measurement of Transient Change in Viscoelasticity of the Radial Arterial Wall Due to Flow-Mediated Dilation

池下 和樹1, 佐藤 光貴1, 長谷川 英之1, 2, 金井 浩1, 2

Kazuki IKESHITA1, Mitsuki SATO1, Hideyuki HASEGAWA1, 2, Hiroshi KANAI1, 2

1東北大学大学院医工学研究科医工学専攻, 2東北大学大学院工学研究科電子工学専攻

1Department of Biomedical Engineering, Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Department of Electronic Engineering, Graduate School of Enineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
循環器系疾患の主因である動脈硬化症は,血管の内側(内皮)から進行するとされている[1].さらにその初期段階では,血管中膜を構成している平滑筋細胞タイプが変化することも報告されている[2].ゆえに,動脈硬化症の早期診断のためには,血管最内層を覆う一層の内皮細胞の機能や,血管壁に粘弾性効果を与えている平滑筋の力学的特性の計測・評価が重要となる.我々の研究グループでは,一心拍中の血圧の変化(応力)とそれによる血管壁内中膜領域の微小な厚み変化(ひずみ)を計測し,血管壁応力-ひずみ特性の変化を非侵襲的に計測している.さらに,自動的かつ客観的な動脈壁境界検出法を用いて計測者間の差を低減するとともに,得られた応力-ひずみ特性から最小二乗法を用いて粘弾性パラメータを推定し,その経時的変化を評価している[3].本報告では,ひずみ速度の高周波ノイズをLow-pass filter (LPF)を用いて低減することにより,粘弾性パラメータ推定の精度向上を行う.
【対象と方法】
本報告では最適なカットオフ周波数を設定するために,カットオフ周波数を変更しながら血圧波形実測データとモデルの間の二乗平均平方根誤差(MSE)の評価を行った. MSEが最小となるようにカットオフ周波数を決定し,その条件下で粘弾性パラメータを推定した.
【結果と結論】
非侵襲的に計測された橈骨動脈における,実測(赤)および推定(LPFなし: 黒,LPFあり: 青)の血圧波形と応力-ひずみ特性をそれぞれ図(a),(b)に,推定された粘弾性パラメータの時間推移を図(c),(d)にそれぞれ示す.図(a),(b)において,高周波ノイズが顕著に低減され,計測波形(LPF有)とモデル波形が良く対応していることが分かる.MSEは10.1%から1.1%に低減することができた.図(c),(d)より,駆血解除後の内皮反応時における一時的な弾性率の低下(約300 kPa)と粘性率の増加(約30 kPa+s)が計測されていることが分かる.本手法によって,動脈壁粘弾性特性の非侵襲かつ高精度な計測が期待できる.
【参考文献】
[1] R. Ross, New Engl. J. Med., 340, 115, 1996.
[2] 松沢佑次,Jpn. J. Clin. Med., 51, 1951, 1993.
[3] K. Ikeshita, et al., Jpn. J. Appl. Phys. 50, 07HF08, 2011.