Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:弾性計測

(S352)

高周波数超音波による人工皮膚の弾性計測

Elasticity Measurement of Artificial Skin by High Frequency Ultrasound

西條 芳文1, 長岡 亮1, 和泉 拓哉1, 久保 聖乃1, 小島 貴則1, 工藤 千奈1, 小林 和人2

Yoshifumi SAIJO1, Ryo NAGAOKA1, Takuya IZUMI1, Kiyono KUBO1, Takanori KOJIMA1, Yukina KUDO1, Kazuto KOBAYASHI2

1東北大学医工学研究科医用イメージング研究分野, 2本多電子株式会社研究開発事業部

1Biomedical Imaging Laboratory, Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Department of Research and Development, Honda Electronics Co. Ltd.

キーワード :

【目的】
皮膚のエイジングによるたるみやシワには,真皮におけるコラーゲンの量や質の変化が大きく関わっている.したがって,皮膚のエイジング評価には,表皮と真皮を判別しうる解像度で真皮の弾性を非侵襲的に計測する方法の開発が必要である.本研究では,音響放射圧によって発生させた人工皮膚の微小な変位を中心周波数100 MHzの高周波数超音波の位相差により高解像度で検出し,層構造による音響特性および弾性の違いを画像化することを研究目的とする.
【方法】
直径5 cmの半球状のPZT製超音波振動子(中心周波数1 MHz)の中央に直径5 mmの穴をあけたものを音響放射圧発生用のアプリケータとし,中央の穴に中心周波数100 MHzのPVDF製超音波振動子を同軸に通して微小変位の測定を行った.微小振動取得用振動子には2000 Hzで50 Vppの電気信号を印加し高速デジタイザカードにより信号を取得した.高周波数超音波128パルスに1回25 Vppで7波のバースト波を発生させ音響放射圧とした.計測対象は人工皮膚(ペルナック®,グンゼ)とし,まず高周波数超音波振動子の機械走査によりBモード像で層構造を確認したのち,機械走査を止め1ラインにつきMモード信号を取得した.取得した高周波数信号の変位を位相レベルで解析し,外部励振に伴う組織の振動速度およびひずみ率を計測した.
【結果】
図Aは人工皮膚のBモード像,図BはMモード像,図Cは1ラインの速度変化を示す.Bモード像では1層目: 強化フィルム層,2層目: 補強メッシュ層,3層目: スポンジ層が観察された.表面のシリコン位相変位は約180度で,100MHzの超音波の波長が15ミクロンなので音響放射圧による約7ミクロンの変位が計測可能であった.Bモード上の3層に相当する部位のそれぞれについて速度を計測したところ,各層の最高速度は1層目: 50 mm/sec,2層目: 22 mm/sec,3層目: 44 mm/sec,それらの速度差から算出したひずみ率は1層目: 1.0,2層目: 0.4,3層目: 1.4となった.
【考察】
高周波数超音波の位相差解析により,音響放射圧による人工皮膚の振動計測が可能であった.算出したひずみ率はBモード像の高輝度部位で高く,低輝度部位で低かった.本研究成果を生体皮膚に応用することで皮膚のエイジング評価が可能である.