Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:イメージングⅡ・ファントム

(S351)

透明性と自己接着性に優れるファントム材料の検討

Development of the phantom material has transparency and pliability

西 泰治

Taiji NISHI

株式会社マテリアルデザイン新素材研究開発チーム

New material development team, Material Design., CTD

キーワード :

【背景】
生体模擬材料であるファントムは,生体組織に近似した比重(1.0)を有することが好ましい.更には,生体光計測にも対応すべく透明で,異なる音響特性を有する材料を接合可能な自己接着能を有することも,重要な因子であると考える.
【目的】
我々は,熱可塑性エラストマーである,アクリル系ブロック共重合体に着目,比重を1.0に近づけることと,透明性の両立が可能か検討を行った.
【対象】
アクリル系ブロック共重合体は,硬質成分であるポリメチルメタクリレート(A)と,軟質成分であるポリブチルアクリレート(B)からなる,ABAブロック共重合体である.分子量が揃っているために,A,Bの屈折率が異なっても透明であり,軟質成分が高くなると自己接着性を発現するようになる.アクリル系ブロック共重合体の特徴を生かし,比重調整を試みた.
【方法】
アクリル系ブロック共重合体のカルボルシル基(COOH基)と,ひまし油のカルボルシル基に着目,どちらもアセトンに溶解可能であることから,溶剤キャスト成形を試みた.アクリル系ブロック共重合体(株式会社クラレ,クラリティ,LA2140e,比重1.08)をアセトンに溶解させた後,ひまし油(伊藤製油株式会社,精製ひまし油,比重:0.95)を投入して攪拌,脱泡後,型枠に流して,縦・横10cm,厚さ3mmのシートを得た.アクリル系ブロック共重合体とひまし油の配合比は,90/10wt%(比重1.06),50/50(比重1.03)とした.
【結果と考察】
アクリル系ブロック共重合体とひまし油の混合シートは,ナノレベルで相溶したため,透明性を保持していた.比重1.06シートの光学物性値は,全光線透過率85%,ヘイズ8%であった.比重1.03シートは,シートの表面にひまし油ブリードアウトが発生し,自己接着能が損なわれていた.透明性と自己接着能を両立させる観点では,ひまし油の配合比は,5〜20wt%が好ましいと考える.
【結論】
アクリル系ブロック共重合体は,ひまし油をナノレベルで配合することができる.比重を1.0に近似でき,透明性と自己接着能を両立させることが可能である.