Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:イメージングⅡ・ファントム

(S351)

天秤法超音波パワー測定における水槽構造の影響

Influence of the arrangement of the radiation force balance system on ultrasonic power measurement

内藤 みわ, 大江 一太

Miwa NAITO, Ichita OOE

日立アロカメディカル株式会社第一メディカルシステム技術本部

Medical Systems Engineering Division 1, Hitachi Aloka Medical, Ltd.

キーワード :

【はじめに】
超音波診断装置の安全性評価指標としてサーマルインデックス(TI)及びメカニカルインデックス(MI)がある.今回TI算出のベースとなる超音波パワーの測定法について検討した.
【天秤法による超音波パワー測定法】
超音波パワーは天秤法により音響放射力を測定することで算出する.音響放射力とは超音波が水中を進行するときに発生する静的な微小な力であり,超音波の非線形効果に基づく.これはハイドロホンで測定される時間的変化を伴う音圧とは区別される.十分に広い水中の一部に進行超音波が存在するとき,進行方向と垂直に音響吸収率の十分高い平板ターゲット(受圧板)を置くと放射力が受圧板に働く.この力を電子天秤で測定し,超音波パワーに換算する.最近廃止となったJEITA規格AEX-6001(旧EIAJ規格AM-29)は,反射コーンとその上下に内膜・外膜を設けた水槽構造を推奨している.しかし,該当する国際規格IEC61161では反射コーンや内膜は推奨していない.今回このような水槽構造の違いにより,得られた超音波パワーの値が大きく異なる場合があることがわかった.
【実験方法】
AEX-6001推奨の水槽構造(旧構造)と反射コーンなし外膜のみの水槽構造(新構造)で同じ装置とプローブの組合せで同一音場の超音波パワーを,駆動電圧を変えて測定して比較した.また,膜を用いずターゲットが反射型の簡易超音波パワーメータUPM-DT-1でも測定した.同一送信条件でプローブ表面温度も測定し,単位トータルパワーあたりの温度上昇(温度上昇係数)の駆動電圧による変化も調べた.更に参照音源の超音波パワーを旧構造・新構造で測定し,産総研で測定した超音波パワー値と比較した.
【結果】
周波数が低い場合,旧構造・新構造・UPM-DT-1のいずれも測定値は良く一致した.周波数が5MHz以上と高くなると,駆動電圧が高くなるにつれて,新構造・UPM-DT-1の値に比べて旧構造の値が低く測定され,差が2〜3倍に達する場合もあった.温度上昇係数は,新構造とUPMの測定値から算出すると駆動電圧を変えても大きく変化しないが,旧構造の測定値を使うと駆動電圧が高くなるにつれて増加した.参照音源の測定値は産総研と新構造がほぼ同等,旧構造の順で小さくなった.
【考察】
反射コーンと内膜・外膜を持つ旧構造の水槽では超音波パワーは正しく測定できない.特に高周波で高音圧のときに測定値が低めになるのは,振動子から出た超音波のエネルギーが伝搬するうちに音響流のような運動エネルギーに変換され,内膜によって物理的に遮断されるためと考えられる.JEITA規格成立当時はそのような問題に気づかず,当時の旧JIST1501でも同じ水槽構造が採用されていた.そのため,日本ではこの水槽構造が一般的だったと思われる.一方IEC規格は多数の専門家から成る各国委員会のコンセンサスに基づいて成立するため,審議段階で不適切な方法は採用されず,このような問題は起りにくい.今後は,最新のIEC規格を常にチェックし,整合させておく必要がある.
【参考文献】
[1]JEITA規格AEX-6001「天秤法による超音波出力測定法」(廃止)
[2]IEC 61161 Ed.2, 2006: Ultrasonics - Power measurement -Radiation force balances and performance requirements