Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:イメージングⅡ・ファントム

(S350)

非線形システムのための新しい生体非線形イメージング

A novel tissue harmonic imaging for ultrasound scanner with non-linear system

石原 千鶴枝, 田中 宏樹, 橋場 邦夫

Chizue ISHIHARA, Hiroki TANAKA, Kunio HASHIBA

日立製作所 中央研究所メディカルシステム研究部

Medical Systems Research Department, Hitachi, Ltd., Central Research Laboratory

キーワード :

【目的】
生体非線形イメージング(THI)では,従来,PI法が広く用いられている.PI法では,同一部位に対し互いに位相の反転した音波を送波する.それらのエコー信号を加算することで基本波信号(FS)を打ち消し,生体の非線形信号(HS)のみを抽出する.しかし,実際の電気音響変換素子及び送波アンプなどは,入力電圧に対して完全に線形的に駆動しない.この場合,反転した電圧信号を入力しても,送信音波は完全に反転した波形とはならず,エコー信号加算後にFSを完全に打ち消すことができない.本報告では,こうしたシステムの非線形性による影響を排除し,より高画質となるTHI画像を得るために,新しい方式を提案・検証する.
【方法】
提案方式では,同一部位に対し音圧振幅の異なった音波を送波し,それらのエコー信号を減算処理することでHSを抽出する,振幅変調法を用いる.音圧振幅は駆動させる探触子内の電気音響変換素子の数によって変化させる.例えば,駆動させるチャンネルを1チャンネル置きにすると,口径の駆動素子の総面積は半分となるため,送信ビームの振幅は半分となる.このとき,駆動させる素子にとっては同一の電圧信号が入力されるため,送信システムの非線形性に影響されない.本方式では,エコー信号を減算処理するため,最終的に得られるHSはPI法よりも原理的には少なくなるが,HSのFSの打ち消し残りに対する割合(以下HF比)は高くなると考えられる.そこで,実波形を用いた非線形音場シミュレーションによって,提案方式におけるHF比を比較する.また,撮像実験によって提案方式の有効性を検証する.
【結果/考察】
音場シミュレーションの結果,今回比較に用いたシステムでは,PI法のHF比は20dBであったのに対し,提案方式はフォーカス点付近で更に20dB程度向上することが明らかとなった.一方,電気ノイズに対するSN比は約16dB低下した.また,撮像実験で取得した画像からは分解能の向上が確認できた.しかし,駆動素子を減らした2回目の送信では,グレーティングローブが発生するため,FSの打ち消し残りが生じ,アーチファクトが現れることが分かった(図(b)参照).グレーティングローブを抑制するために, 2回目に駆動させなかった素子を用いた3回目の送信を行い,そのエコー信号も減算処理した.その結果,グレーティングローブによるFSの打ち消し残りを除去できることを確認した(図(c)参照).