Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:治療・生体作用

(S347)

超音波造影剤・遺伝子導入キャリアーとしての正電荷脂質含有バブルリポソームの開発

Novel liposomal bubbles containing cationic lipid for ultrasound imaging and gene delivery

根岸 洋一1, 髙橋 葉子1, 中村 有沙1, 鈴木 大地1, 鵜飼 さおり1, 鈴木 亮2, 丸山 一雄2, 新槇 幸彦1

Yoichi NEGISHI1, Yoko TAKAHASHI1, Arisa NAKAMURA1, Daichi SUZUKI1, Saori UKAI1, Ryo SUZUKI2, Kazuo MARUYAMA2, Yukihiko ARAMAKI1

1東京薬科大学薬学部 薬物送達学教室, 2帝京大学薬学部 生物薬剤学教室

1Department of Drug Delivery and Biopharmaceutics, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 2Department of Biopharmaceutics, Teikyo University

キーワード :

【目的】
これまでに我々は,診断用超音波造影ガス封入リポソーム(バブルリポソーム)を開発し,超音波照射と併用することで,培養細胞および動物組織への遺伝子・siRNA導入ツールとなることを報告している.超音波造影と核酸送達が可能なバブルリポソームは,疾患の診断および治療の有用なツールとなり得ると考えられる.しかしながら,従来型のバブルリポソームの構成脂質は中性脂質であるDPPCとDSPE-PEG2000であり,負電荷をもつ核酸と複合体を形成し難いため,血管内投与後の体内挙動が異なる可能性がある.また,核酸の排泄および生体内酵素による分解も問題となるため,導入効率の低下が懸念される.これらの問題を改善するため,正電荷脂質を用いてバブルリポソームを調製し,負電荷をもつpDNAやsiRNAを表面に搭載可能な新規キャリアーの開発を進めている.そこで本研究では,ガスの保持などの安定性,造影効果,核酸搭載量の向上などを目指し,数種の異なる正電荷脂質を用いてバブルリポソームを調製し,新規超音波造影剤および遺伝子導入キャリアーとしての有用性を in vitroおよびin vivoにおいて評価した.
【対象と方法】
構成脂質として,DPPCおよびDSPE-PEG2000の他に,正電荷脂質であるDSTAP・DSDAP・DDABの3種を用い,DPPC:(cationic lipid):DSPE-PEG2000 = 64:30:6 (molar ratio)の組成のリポソームを調製した.その後,超音波造影ガス(パーフルオロプロパン)を封入することで各種バブルリポソームを調製し,その希釈溶液を6wellプレートへ添加し,超音波造影装置を用いてその造影効果・持続時間を評価した.また,pDNAの各種バブルリポソーム表面への搭載をフローサイトメトリーにより確認した.レポーター遺伝子であるLuciferaseをコードしたpDNAをバブルリポソームに搭載し,超音波照射の併用により,のCos-7細胞への導入を試み,Luciferase活性を指標に細胞内導入能を評価した.その際の細胞への毒性をWST-8 assayにより併せて評価した.さらに,in vivoにおける超音波造影能について,マウスの尾静脈より各種バブルリポソームを投与し,超音波造影装置を用いてその造影能を評価した.
【結果と考察】
各種正電荷脂質含有リポソームは,これまで報告してきたバブルリポソームと同様に,超音波造影ガスの封入が可能であり,造影能も有することが示唆された.さらに,超音波照射との併用により,Cos-7細胞への遺伝子導入が可能であることが明らかとなり,その遺伝子発現レベルには,各バブルリポソームで若干の差異が生じることも示唆された.これは,構成脂質の違いにより,超音波に対する応答性が異なることによると考えられる.またいずれのバブルリポソームによる導入の際にも,顕著な細胞傷害性は認められなかった.さらに,各種バブルリポソームはin vivoにおいても超音波造影剤としての適用が可能であることが示唆された.いずれの脂質組成がより有用であるかについては,in vivoにおける遺伝子導入効果などの更なる検討が必要であるといえる.
【結論】
3種の正電荷脂質含有バブルリポソームの調製に成功し,それらは超音波造影能,および遺伝子導入能を有することが示唆された.今後はin vivoにおける遺伝子導入効果および傷害性などの評価を加えることで,脂質組成の最適化を進めていく予定である.