Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:治療・生体作用

(S347)

バブルリポソームと超音波併用による抗癌剤内封AG73リポソームの抗腫瘍効果の増強

Enhancement of antitumor effect of AG73 liposomes encapsulating doxorubicin by Bubble liposomes and ultrasound

濱野 展人1, 根岸 洋一1, 小俣 大樹1, 髙橋 葉子1, マナンダール まや1, 佐藤 日向子1, 鈴木 亮2, 丸山 一雄2, 野水 義基3, 新槇 幸彦1

Nobuhito HAMANO1, Yoichi NEGISHI1, Daiki OMATA1, Yoko TAKAHASHI1, Maya MANANDHAR1, Hinako SATO1, Ryo SUZUKI2, Kazuo MARUYAMA2, Motoyoshi NOMIZU3, Yukihiko ARAMAKI1

1東京薬科大学薬物送達学教室, 2帝京大学生物薬剤学教室, 3東京薬科大学病態生化学教室

1Department of Drug Delivery and Molecular Biopharmaceutics, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 2Department of Biopharmaceitics, Teikyo University, 3Department of Clinical Biochemistry, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences

キーワード :

【目的】
リポソームをはじめ,ポリエチレングリコール (PEG)を用いたDDS製剤は細網内皮系 (RES)の捕捉を回避するなどの利点を有するが,標的指向性の欠如や薬物の放出効率などに不安を抱えることから,更なるDDSキャリアーの機能化が望まれる.また,疾患部位への薬物・遺伝子導入において,非侵襲的外部エネルギーとして知られる超音波と超音波造影剤として用いられているマイクロバブルを併用することで,導入効率が増強することが報告されている.これまでに我々は,癌細胞や血管内皮細胞に対して選択性の高いペプチド (AG73)を用いて,AG73修飾リポソームの開発を進め,本リポソームにドキソルビシンを内封することで,癌細胞に対しての標的指向性による殺細胞効果を示してきた.更に,我々はリポソームに超音波造影ガスを封入したバブルリポソームの開発を進め,超音波と併用することで,遺伝子導入効率が増強することも明らかとしている.そこで本研究では,ドキソルビシンを内封したAG73修飾リポソームの薬物放出効率を高めることで殺細胞効果の増強を図るため,バブルリポソームと超音波照射を併用する検討を試みた.
【方法】
REV法にて脂質組成がDSPCとDSPE-PEG2000 (or DSPE-PEG2000-Maleimide)からなるリポソームを作製し,pH勾配を利用したリモートローディング法にて抗癌剤 (ドキソルビシン)を内封後,カラム精製したものをドキソルビシン内封リポソームとした.また,リポソームに含まれるMaleimide基とペプチドのチオール基によるカップリング反応を利用し,ドキソルビシン内封リポソームにAG73を加えることで,ドキソルビシン内封AG73修飾リポソームとした.ドキソルビシン内封AG73修飾リポソームとバブルリポソーム及び超音波を併用した際の殺細胞効果をAG73のレセプターであるシンデカンを過剰発現させたヒト腎癌細胞 (293T-Syn2)を用いて検討した.293T-Syn2を播種した後,ドキソルビシン内封AG73修飾リポソームを加え,0.5 - 4時間作用させ,レセプター依存的なエンドサイトーシスによって細胞内に取り込ませた後,バブルリポソームを加え超音波照射 (超音波照射条件:2028 kHz,10 sec,0.25 w/cm2,Duty 50%)を行ない,WST-8 assayにて殺細胞効果を評価した.また,バブルリポソームと超音波照射併用によるドキソルビシンの細胞内挙動への影響を検討するため,ドキソルビシン内封AG73修飾リポソームを加え4時間作用させた後,バブルリポソームを加え,超音波照射 (超音波照射条件:2028 kHz,10 sec,0.25 - 1 w/cm2,Duty 50%)を行い,共焦点顕微鏡にて観察した.
【結果・考察】
殺細胞効果の検討から,ペプチド未修飾のドキソルビシン内封リポソームではいずれの時間においても,バブルリポソームと超音波を併用することによる顕著な殺細胞効果の増強が観察されなかったのに対し,AG73修飾リポソームを処理した群では4時間作用させた群においてバブルリポソーム及び超音波を併用することで,有意な殺細胞効果の増強が示された.また,共焦点顕微鏡の結果から,ドキソルビシン内封AG73修飾リポソーム単独ではドキソルビシンがドット状に観察されていることから,エンドソーム内に捕捉されていることが確認された.さらにバブルリポソームと超音波を併用すると,ドキソルビシンが細胞質内全体に拡散,放出されていることが観察された.このことからバブルリポソームと超音波を併用することでAG73修飾リポソームにより癌細胞特異的に取り込まれたドキソルビシンが,より速やかに細胞内部へと放出拡散し,殺細胞効果が増強することが示唆された.現在,担癌モデルマウスを用いて本法の有用性について検討を進めている.