Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:治療・生体作用

(S346)

超音波は血栓成長を抑制する〜塞栓成長抑制・再閉塞予防の可能性〜

Ultrasound control of the growth of thrombus ~ Potential for the embolus growth suppression & the reocclusion prevention ~

澤口 能一, 王 作軍, 古幡 博

Yoshikazu SAWAGUCHI, Zuojun WANG, Hiroshi FURUHATA

東京慈恵会医科大学医用エンジニアリング研究室

medical engineering laboratory, The jikei university school of medicine

キーワード :

【目的】
国内における死因第二位を占める心筋梗塞の約四割,同三位を占める脳血管障害の約六割は,いずれも血栓形成による血管閉栓状態が主原因である.この血流途絶状態を救済するために,ステント留置等の経皮的血管形成術(PTA)やt-PA等の薬物を用いた血栓溶解による再開通法が適用されているが,いずれも治療後の血栓再形成による再閉塞が問題となっている.現在,再閉塞予防をするべく抗血小板薬,抗凝固薬を使用することで一部改善が認められているものの未だ十分とはいえず,再閉塞予防の新規アプローチ法の開発が急務である.これまでに当研究室では,イヌの大腿静脈に血栓を誘発し,血管閉塞状態を作成するモデルにおいて,超音波を血栓誘発部位に照射し続けるだけで血栓成長を抑制し,血管閉塞を抑制できることを報告している.しかし,この報告では超音波の音響強度と血栓成長抑制作用の関係は明らかにされていなかった.そこで,新たに物理的な効果を主体とする超音波が血栓の成長抑制に臨床介入出来るか否かを検証すべく,in vitroにて超音波の音響強度定量的に血栓成長抑制作用を検討した.
【方法】
ウシ血漿にCaCl2(最終濃度:25 mM)を加え,直径15 mm,高さ1.5 mmの円盤状容器に入れ37℃,30 min静置することで血栓を作製した.この血栓内には未反応で残留したCaCl2および凝固の際に活性化したトロンビンを含むため,血栓上部に新たに血漿を加えることで自然に凝固が誘発されるため,これを血栓成長モデルとして用いた.この血栓成長モデルを密閉した状態で37℃の水浴中で30分間超音波を照射した.血栓成長抑制効果は分光光度計を用いて血栓の厚みを測定後,血栓厚(mm)に換算し,超音波照射前後での差を超音波音響強度ごとに評価した.なお本検討で使用した超音波照射条件は以下のとおりである.周波数:500 kHz,音響強度:0.07〜0.72 W/cm2,振動子直径:10 mm,連続波.
【結果】
超音波照射群と超音波非照射群を比較した結果,音響強度0.28〜0.72 W/cm2において血栓成長を顕著に抑制できることを示した(p<0.05).また,血栓成長抑制効果と音響強度のグラフは線形を示し,音響強度依存的に血栓成長抑制効果が増強しうることが示唆された.
【結論】
本検討で見出した低い音響強度域の中周波数超音波による血栓成長抑制効果には,臨床的再開通法に伴う再閉塞リスクを低侵襲的に抑制できる可能性があると期待された.