松澤 亮¹, 獅子谷 卓¹, 佐々木 翔也², 吉澤 晋¹, 梅村 晋一郎^{1, 2}

Ryo MATSUZAWA¹, Takashi SHISHITANI¹, Shoya SASAKI², Shin YOSHIZAWA¹, Shin-ichiro UMEMURA^{1, 2}

¹東北大学大学院工学研究科・電気・通信工学専攻, ²東北大学大学院医工学研究科・医工学専攻

¹Department of Electrical and Communication Engineering, Tohoku University, ²Department of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
高強度集束超音波（HIFU）照射による治療により,生体外から悪性腫瘍等の患部を非侵襲的に治療することが可能となった．治療モニタリングのモダリティとしては,MRIや超音波診断（US）による方法が挙げられる．USは比較的安価で装置の移動が簡便であり時間分解能・空間分解能に優れているが,治療により生じた組織の熱変性や壊死の定量的評価手法に欠けている．臨床では治療過程で生じたキャビテーション等によるB-mode像上の高輝度を治療評価の目安として診断を行っている．本研究では治療過程において高輝度が発生しない,B-mode像での治療状況の目視が困難な場合における治療モニタリング手法について検討を行った．
【方法】
35℃に保たれた脱気水中に生体模擬試料としてブタ肝臓を設置しHIFUを照射すると同時に診断画像のRFデータを取得した．ブタ肝臓は実験前に5％生理食塩水により灌流を行い試料内の血液や気泡を排除し,HIFU照射強度は2.0kW/cm2とした．またHIFUは1s間隔の間欠照射を行い照射休止中にRFデータを取得した．本研究では取得したRFデータを用いてフレーム間の類似度を評価すると同時に音響放射圧等による組織の動きを補償するために,2次元相互相関係数を評価指標としてフレーム間のブロックマッチングを行った．
【結果・考察】
HIFU照射前後における動き補償後の相関演算の結果,焦点領域に相関係数の低下を確認した．一定時間経過後も非相関が持続していたことから組織凝固に伴う不可逆的な信号変化がこの結果より示唆された．しかしHIFU照射前後における非相関領域サイズは,凝固領域サイズと比較すると大きく評価される傾向がある．そこで隣接フレーム間の相関演算を行い得られた相関分布のトラフを逐次反映させたところ,得られた非相関領域サイズは凝固領域サイズとほぼ一致した．この結果から非相関領域サイズから凝固領域サイズを推定可能であることが示された．ブロックマッチングによる動き補償の効果に関する検証を行ったところ,動き補償無しの場合同領域の視認が困難となった．この結果からブロックマッチングによる動き補償の効果が確認され治療時に生じる患者の動きを考慮しながら治療評価が可能であることを示唆された．
【結論】
本提案手法によって,B-mode像上で目視されなかった信号の変化を描出することができた．今後は非相関発生と凝固の関係性を検証すると同時に,非相関発生のメカニズムの解明を行っていく．