Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:バブル

(S340)

パルス超音波と微小気泡を用いた細胞へのマイクロインジェクションの試み

A new microinjection technique using short-pulsed ultrasound and microbubbles

奥山 学, 工藤 信樹, 清水 孝一

Manabu OKUYAMA, Nobuki KUDO, Koichi SHIMIZU

北海道大学 大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【はじめに】
我々は,パルス超音波と微小気泡を用いたソノポレーションに関する検討を行っている.本手法では,微小気泡の付着した部位に細胞膜の損傷を生じさせることができる.微小気泡の大きさや付着位置を変えることにより,膜損傷の程度や薬剤などの導入量を制御できればソノポレーションの基礎研究に有用である.そこで,我々は気泡をトラップできる光ピンセットの開発を行い,その実用性を検証してきた.今回は,本技術を薬剤を目的とする細胞に選択的に導入するマイクロインジェクション応用した結果について述べる.
【方法】
波長1064 nm,最大出力1 Wの近赤外レーザ(YLM-2-1064-LP,IPG LASER)からの光をコリメートし,空間光位相変調器(X10468-03,浜松ホトニクス)で位相変調した後に倒立型顕微鏡(ECLIPSE Ti,ニコン)に導入した.この光をさらに40倍の対物レンズ(N.A. 0.60)で結像することにより観察面に強度の高い光ピンセットビームを作成した.この光ビームを用いてカバーガラス上に培養したヒト前立腺がん細胞(PC-3,LNCaP)の周囲にある微小気泡の径と位置を制御した.気泡を捕捉したままでパルス超音波を1回照射し細胞の変化を観察した.超音波の中心周波数は1 MHz,波数は3波で,最大負圧1.3 MPaとした.微小気泡としては自作のアルブミンのシェルを持つ気泡を用い,培養液には蛍光物質Propidium iodide (PI)を5 μl/mlの濃度で添加した.
【結果および検討】
細胞から気泡半径の数倍の距離に微小気泡を捕捉した状態でパルス超音波を照射することにより,細胞へのダメージが小さい状態で少量の蛍光物質を細胞内に導入できることを確認した.一例をFig. 1に示す.(a)光ピンセットを用いて直径約2 μmのアルブミンバブルを細胞から気泡径の約5倍の距離に捕捉する.(b)パルス超音波を照射すると,細胞膜に軽度の損傷が生じる様子が観察できた.(c)超音波照射前後でPIの輝度が上昇していることから膜に一時的な損傷が生じていることが確認できる.
本研究の一部は科研費挑戦的萌芽研究により行われた.