田中 智彦, 橋場 邦夫

Tomohiko TANAKA, Kunio HASHIBA

日立製作所中央研究所

Central Research Laboratory, Hitachi Ltd.

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【背景】
血流動態は心臓のポンプ機能と密接に関係しているため,血流の挙動を適切に捉えることは心臓の機能を診断する上で極めて重要となる．このため,心腔内の血流速度を計測し,流体力学的な解釈を補足することで,心機能診断へ応用する研究が盛んに行われている．臨床で広く用いられているものの一つに,ドプラ効果を用いて計測された血流速度に簡易ベルヌーイ則を適用して計測する圧較差に関する研究がある．圧較差の精度はドプラ計測の速度ピークの決定方法,すなわちドプラ速度計測に大きく依存してしまうという一面をもつが,ドプラ波形とピーク速度の関係に関する知見は現状ほとんど得られていない．
【目的】
本研究では,簡易ベルヌーイ則による弁逆流を用いた圧較差精度を調べることを目的として,その精度に大きく寄与するドプラ波形とピーク速度の関係を調べる．
【方法】
弁逆流の評価システムとして,既報（Tanaka & Hashiba, Jpn. J. Med. Ultrasonics, vol.38:S346, 2011）で報告した生体大動脈弁を自動で開閉制御制御できる超音波撮像評価系システムを用いる．生体弁には豚大動脈弁を用い,切削により逆流を生成した．また,流速計測法として連続波ドプラ計測を用いた．特に本研究では速度の検証対象として,弁の前後の圧較差を圧センサで計測し,圧較差から簡易ベルヌーイ則を用いることで,検証用ピーク速度を算出した．
【結果】
弁逆流の速度分布を適切に考慮し,速度ピーク値を決定することで,比較用の圧センサから算出された速度と良好の一致を示している（図）．これまで,殆ど検討がされていなかった弁逆流ドプラ速度と弁逆流ピーク速度との関係の詳細が明らかとなった．