Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:イメージングⅠ

(S335)

光音響顕微鏡によるマウス膝軟骨の観察

Observation of knee cartilage in mice by photoacoustic microscopy

和泉 拓哉1, 三井田 佑輔1, 長岡 亮1, 久保 聖乃1, 小島 貴則1, 佐藤 みか2, 萩原 嘉廣3, 西條 芳文1

Takuya IZUMI1, Yusuke MIIDA1, Ryo NAGAOKA1, Kiyono KUBO1, Takanori KOJIMA1, Mika SATO2, Yoshihiro HAGIWARA3, Yoshifumi SAIJO1

1東北大学大学院医工学研究科, 2東北大学工学部, 3東北大学大学院医学系研究科 整形外科学分野

1School of Biomedical Engineering, Tohoku University Graduate School, 2School of Engineering, Tohoku univercity, 3School of Medicine, Orthopedic Surgery, Tohoku University Graduate School

キーワード :

【目的】
光音響イメージングは,理論上,超音波よりも高分解能で,OCTよりも深達度が高くなる.したがって,光あるいは超音波を単独で用いた従来のモダリティでは観察できなかった深部組織を高分解能かつ高コントラストにイメージングする手法として期待されている.発生する光音響信号は生体の吸光係数に比例し,波長532 nmでは赤色の吸光係数が高く,赤血球内のヘモグロビンを反映した信号が得られる.したがって,光音響イメージングにより組織の形態だけではなく,血管の分布を強調して画像化することが可能になる.本研究では半導体レーザを用いた光音響顕微鏡を開発し,マウスの膝軟骨を超音波法と光音響法で画像化することで,生体組織の光音響特性について明らかにすることを研究目的とする.
【方法】
レーザの励起には浜松ホトニクス製のマイクロチップレーザ(波長 532 nm,繰り返し周波数 50 Hz,ファイバ出力 400 μJ,パルス幅 3.4 ns),超音波の受信には凹面トランスデューサ(中心周波数50 MHz)を用いた.超音波振動子の中心部に穴を開けてファイバを通し,レーザの照射と超音波の受信を同軸で行った.構築した実験系を用いて,水中で固定したマウスの膝軟骨を超音波と光音響でそれぞれ計測し,Bモード画像を得た.計測領域は横2 mm×深さ0.75 mmでサンプリング数はそれぞれ100×1024点,サンプリング周波数は1 GHzであった.SN比を良くするために超音波は20回,光音響は100回のスキャンを平均化した.
【結果】
図1(a)が超音波イメージング,(b)が光音響イメージングの結果である.超音波イメージングでは軟骨表面からの信号は弱く,軟骨下骨表面からの信号が非常に強い.一方,光音響イメージングでは軟骨からの信号は弱いが,軟骨下骨よりも深部の海綿骨からの非常に強い信号をとらえている.
【考察】
構築した光音響顕微鏡でマウスの膝軟骨の観察を行い,軟骨下骨よりも深部の海綿骨からの光音響信号をとらえることができた.これは今回用いたレーザ光の波長が532 nmで海綿骨内の血管分布を反映していること,光音響信号のスペクトルが低周波数領域に及んでいたことに関係すると考えられる.レーザ光の拡散により反射信号が弱くSN比が悪かったので,in vivo計測の際には,ファイバの先端にレンズを付けるなどして効率的にレーザを照射させる必要がある.