Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:血管・心臓

(S334)

超音波照射と電気刺激による培養心筋細胞の期外収縮発生の時間閾値に関する検討

Temporal thresholds for premature ventricular contractions induced by exposure of cultured cardiac myocytes to ultrasound and electrical stimulations

水内 美里, 工藤 信樹

Misato MIZUUCHI, Nobuki KUDO

北海道大学 大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【はじめに】
これまで我々は,ラット培養心筋細胞を用いて超音波照射の影響に関する検討を行い,期外収縮の発生が超音波の照射時相に関する時間閾値を持つことを報告してきた.しかし,細胞の自律拍動周期が試料毎に大きく異なり,計測された閾値には大きなばらつきが見られた.そこで本研究では,電気刺激により拍動周期を一定に制御しながら超音波を照射できる培養容器を作成し,超音波照射による期外収縮発生の時間閾値について再検討した.
【方法】
以前我々が作成した培養容器では,細胞の接着性が低いなどの問題から,長時間拍動を持続できないという問題があった.これらを解消するため,本研究では培養容器としてμ-Slide Ⅵ flow through(ib80606,日本ジェネティクス)を用いた.これは厚さ0.4 mm,幅3.8 mmの薄い流路をスライドガラス大のプラスチック板内部に設けたもので,この内部にラット新生仔から単離した心室筋細胞を培養した.また,流路両端に設けられた培養液潅流用のパイプより正負電極を挿入し,電圧10 V,繰り返し周波数1 Hz,デューティ比3%の矩形波電圧を印加した.超音波の発生には,中心周波数1 MHzの集束型振動子を用い,最大負圧1.3 MPa,波数3波〜10波のパルス超音波を発生させた.
【結果と検討】
新たに開発した培養容器内に心筋細胞を培養し,個別の周期で自律拍動をしている細胞に対して電気刺激を行い,30分間以上継続して拍動が同期できることを確認した.次に,電気刺激から200〜400 msの範囲で50 ms間隔のディレイを設定して超音波を照射し,期外収縮発生の有無を調べた.
3つの心筋試料を用いて,5つのディレイ条件について7回ずつ超音波を照射し,期外収縮の発生割合を調べた結果をFig. 1に示す.この結果より,超音波照射による期外収縮発生の時間閾値は200〜250 msにあることが分かる.電気刺激によって期外収縮を発生させた場合の閾値は250 msであり,両者は良く一致した.今後は更に試料を増やして超音波照射の実験を行い,詳細な時間閾値について検討を行う.
なお,本研究の一部は科研費挑戦的萌芽研究により行われた.