Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
基礎:血管・心臓

(S334)

定在波抑制のための雑音位相変調方式について

Random Phase Modulation and standing wave suppression

齋藤 理, 古幡 博

Osamu SAITO, Hiroshi FURUHATA

東京慈恵会医科大学医用エンジニアリング研究室

Medical Engineering Laboratory Research Center for Medical Science, The JIKEI UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE

キーワード :

【目的】
急性脳梗塞に対する血栓溶解剤静注療法は現在最も有効な治療法として普及しつつある.しかし,その溶解効果は必ずしも高くなく(施設依存であるが20から40パーセント程度)溶解効果の向上が求められている現状である.次世代脳血栓溶解法として経頭蓋的超音波照射法が注目されている.この経頭蓋超音波照射法は頭蓋内局所にホットスポットを生じる恐れがある.ホットスポットとは,頭蓋内に照射された超音波が頭蓋骨反対側内面で反射を繰り返し,その多重反射が重なり合って局所的に音圧が増強された所である.ホットスポットでは,機械的な細胞引裂き張力の増大や局所高温化による細胞損傷を招来する恐れがある.このホットスポットを回避することが経頭蓋的超音波照射法の安全性を担保する鍵となっている.本研究の目的は,振動子駆動電圧を雑音で位相変調する方式について,定在波抑制効果を実験的に明らかにすることである.
【方法】
信号発信機を用いて,雑音位相変調した電圧の波を生成し,その波を増幅機で増幅した後,圧電振動子(帯域150kHz〜750kHz)に印加することによって,超音波を発生させる.超音波振動子は水中に配置し,水中で超音波を発生させる.超音波の進行方向には反射板として銅板を配置し,銅板で反射された超音波が,進行波と混ざり,定在波が発生するようにする.この超音波定在波を観測するには,シュリーレン装置を用いる.この装置では,水の密度差が輝度の差で表現され,定在波の腹が明るく,節が暗く見える.なお,腹と腹の間隔は約1.5mmである.定在波抑制の効果を定量化するために,定在波抑制比(SWR)を導入する.SWRは,シュリーレン画像の輝度から計算される量であり,定在波の腹と節の輝度の差を平均の輝度で割った値である.SWRが小さいほど,定在波が抑制されていると判断される.
【結果】
正弦波で駆動した場合のシュリーレン画像を図1に,雑音位相変調方式で駆動した場合のシュリーレン画像を図2に示す.駆動電圧はそれぞれ,16Vpp,24Vppとした.図1には明瞭な縞模様が見え,定在波が立っているのに対し,図2には縞模様は消失している.SWRの値は,それぞれ,50%,4%となり,10分の1以下に抑制された.
【結論】
雑音位相変調方式によって定在波が抑制されることが示された.