Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

奨励賞演題:産婦人科

(S326)

妊娠初期の臍帯付着部位と繁生絨毛体積並びに子宮・臍帯血流動態の関係

Volume of chorion villosum and utero-umbilical blood flow in association with location of the umbilical cord in the first trimester

仲村 将光, 長谷川 潤一, 濱田 尚子, 小林 翠, 松岡 隆, 市塚 清健, 岡井 崇

Masamitsu NAKAMURA, Junichi HASEGAWA, Shoko HAMADA, Midori KOBAYASHI, Ryu MATSUOKA, Kiyotake ICHIZUKA, Takashi OKAI

昭和大学産婦人科学教室

Obstetrics and Gynecology, Showa University

キーワード :

【目的】
胎盤機能は,胎盤実質の体積や臍帯・胎盤血流によって変化する.我々は,妊娠初期に臍帯が子宮下部に付着する症例では,初期の母体血清PAPP-A値が低いこと,更に出生児体重,胎盤重量が小さいことなどから,その後胎盤機能が低下する可能性を報告してきた.そこで本検討では,妊娠初期の臍帯付着部位と繁生絨毛の体積及び子宮,臍帯血流の関係を調べ,後の胎盤機能の発達への影響の検討に することを目的とした.
【対象と方法】
調査期間は2011年2月から同年11月とし,妊娠11週0日から13週6日に同意の得られた単胎妊婦を対象として,妊娠初期の超音波検査を施行した.検者は3人で行い,使用した機器はVolson E8(GE health care),4-8MHz経腹トランスデューサーである.内子宮口(超音波検査における子宮内腔の最下点)から臍帯付着部位直下の繁生絨毛と思われる高輝度領域(将来胎盤となる可能性のある組織)の母体面までを子宮筋に沿ってトレースした距離を計測し,その値をDとした.絨毛体積 (P-vol)はManual trace法で30度おきの設定で,子宮筋層や脱落膜領域と思われる場所よりも高輝度に描出される繁生絨毛がすべてボリュームデータとして取り込まれるように,ROIおよび角度を調節し,計測した.両側子宮動脈の血流速度波形 (UtA-RI, UtA-PI),臍帯静脈流速 (V-vel),臍帯静脈径(Dia-V)と流速(V-vel)より求めた臍帯静脈流量 (V-flow),臍帯動脈流速 (A-vel),臍帯動脈径(Dia-A)と流速(A-vel)より求めた動脈流量 (A-flow)を測定した.流速の計測は臍帯の付け根から約1cmの部位で捻転がほとんどなく,直線的に描出される部位で施行した.血流の方向と超音波ビームとの角度は0度であった.各計測値は妊娠週数に依存するものもあるため,CRLで標準化し,それらのz-score同士について相関関係を調べた.なお,本研究は当院の倫理委員会の承認を得て施行した.
【結果】
調査期間における対象382例を検討した.Dは,P-volと相関した(r=0.148, p=0.004).また,UtA-RI (r=-0.191, p<0.0001)やUtA-PI (r=-0.199, p<0.0001)とも相関した.Dは,A-flow,V-flowと有意な相関はなかった.DはV-velとは相関しなかったが,A-velは負の相関を認めた (-0.118, p=0.021).Dは,Dia-A (r=0.111, p=0.032),Dia-V (r=0.104, p=0.045)と有意な正の相関をした.なお,V-flowとA-flowの間には有意な正の相関関係 (r=0.499, p<0.0001)を認めた.
【考察】
本研究により,臍帯付着部位が内子宮口から遠く,子宮体部の頭側にある症例ほど絨毛体積が大きいことが明らかとなった.また,臍帯付着部位が内子宮口から子宮体部側に離れるほど子宮動脈のRI,PIが低く,その後の胎盤の発育に対して良好な環境である可能性が示唆された.一方,臍帯動脈流量および臍帯静脈流量はDと相関しなかったことは計測における精度の問題もあるが,臍帯付着部位と臍帯胎盤還流の関係を考えるうえで興味深い.臍帯動脈流速が子宮体部側の臍帯付着部位の症例で遅くなったのは,胎盤や臍帯の発育がよく,臍帯動脈径が大きいことと関連している可能性がある.臍帯の付着部位や繁生絨毛の発育部位と胎盤の発達や血流動態との関連を明らかにしてゆくことは,周産期管理の質を早い時期から高めてゆくことに貢献するものと思われる.