Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

奨励賞演題:消化器

(S324)

経腹壁US-Elastographyを用いた膵管癌治療の効果予測の試み

Usefulness of US-elastography for predicting therapeutic effect in pancreatic cancer patients treated with neoadjuvant chemoradiation or gemcitabine

河田 奈都子1, 田中 幸子2, 福田 順子2, 松野 徳視3, 蘆田 玲子2, 高倉 玲奈2, 井岡 達也2, 吉岡 二三2, 上原 宏之1

Natsuko KAWADA1, Sachiko TANAKA2, Junko FUKUDA2, Noritoshi MATSUNO3, Reiko ASHIDA2, Rena TAKAKURA2, Tatsuya IOKA2, Fumi YOSHIOKA2, Hiroyuki UEHARA1

1大阪府立成人病センター肝胆膵内科, 2大阪府立成人病センター消化器検診科, 3大阪府立成人病センター超音波検査室

1Department of Gastrointestinal Oncology, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, 2Department of Cancer Survey, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, 3Department of Clinical Laboratory, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases

キーワード :

【目的】
これまで我々はstrain ratio(以下SR)により量的評価が可能となった第2世代US-elastographyが膵充実性腫瘍の良悪性の鑑別に有用である可能性を報告してきた.しかし,現段階の測定原理上SRはバラつきが大きく,異なる症例間での比較には限界がある.そこで,同一症例においてstraingraphを参考に可能な限り一定条件下に測定したSRの経時的変化から膵管癌の治療効果予測を行うことができるか検討した.
【対象と方法】
対象は治療開始前に病理学的に確認された膵管癌で経時的にelastographyを施行した15症例30件(内訳は切除可能膵癌で術前放射線化学療法(以下NACRT)を施行した症例6例,切除不能膵癌でgemcitabine(以下GEM)単独療法を施行した症例9例).Real-time Tissue Elastography®システムを搭載したHitachi社製Preirusを用い周波数8MHzのマイクロコンベックスプローブで走査した.NACRT症例ではCRT開始前と終了後にelastographyを施行しその経時的変化と腫瘍マーカーの変化,切除標本を用いて組織学的に評価した術前治療の効果とを対比した.GEM単独症例では治療開始後4か月以内にPDとなった症例をGEM不応群,5か月以降にPDとなった症例をGEM奏功群とし両群におけるelatogrsamの経時的変化を比較した.なお,2回の検査間隔は平均3.7±1.1か月であった.
【結果】
15例中2例(13%)では経過中に癌性腹膜炎による腹水が出現し2回目のelastogramを得ることができなかった.<NACRT症例>全例でNACRT後にSRが上昇した.質的評価(有意な色調と色調の均一性によって評価した)では6例中4例(67%)でNACRT後に色調が不均一から均一に変化した.NACRT前後の腫瘍マーカー値の変化率とSRの変化率との間には概ね正の相関を認めた(SR 変化率(中央値)はCA19-9値の変化率10倍以上群で3.73 vs 10倍未満群で1.31).NACRT前に腫瘍マーカーが上昇していなかった1例も含め病理学的な治療効果が大きかった症例ではSRの変化率が大きかった(SR変化率(中央値)は増殖しうる癌細胞が2/3以上残存群で1.50 vs増殖しうる癌細胞が1/3以上2/3未満残存群で3.36).<GEM単独症例>経過中にSRが上昇した症例が4例,低下した症例が3例であったがこれらとGEM奏功(n=4)または不応(n=3)との間に相関性はなかった.GEM不応群ではSRの変化率が大きい傾向があった(SR変化率(中央値)はGEM不応群で3.23 vs GEM奏功群で1.81).GEM不応群の全例(3/3)で経過中に何らかの質的変化を認めたのに対してGEM奏功群では50%(2/4)でのみ変化を認めた.SR変化率が2.5以上かつ経過中に質的変化を認めた症例をGEM不応群,それ以外をGEM奏功群とした場合には感度66%,特異度100%,PPV100%,NPV80%,正診率86%で区別可能であった.
【結論】
NACRT症例ではSR変化率とNACRTの効果に正の相関を認め,SR変化率はNACRTの効果予測に有用な指標となりうる.GEM単独症例ではGEM不応群で経過中にelastogramが奏功群より変化する傾向があり,SR変化率と経過中の質的変化の有無でGEM奏功または不応が区別されえた.以上より,US-elastographyは膵管癌の治療効果予測に有用である可能性が示された.