Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

奨励賞演題:消化器

(S324)

慢性肝疾患におけるソナゾイド造影超音波後血管相での肝,脾bubble崩壊距離の検討

Evaluation of hepatic and splenic parenchymal microbubble collapse length in chronic liver disease using Sonazoid contrast enhanced ultrasonography

塩澤 一恵1, 渡邉 学1, 高山 竜司1, 金川 武徳1, 高橋 政義1, 和久井 紀貴1, 飯田 和成1, 工藤 岳秀2, 丸山 憲一2, 住野 泰清1

Kazue SHIOZAWA1, Manabu WATANABE1, Ryuji TAKAYAMA1, Takenori KANEKAWA1, Masayoshi TAKAHASHI1, Noritaka WAKUI1, Kazunari IIDA1, Takahide KUDO2, Kenichi MARUYAMA2, Yasukiyo SUMINO1

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Gastroenterology and Hepatology, Toho University Medical Center Omori Hospital, 2Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center Omori Hospital

キーワード :

【はじめに】
これまでわれわれはC型慢性肝疾患症例のソナゾイド造影超音波(CEUS)後血管相においてFlash replenishment sequence(FRS)を用いて肝臓および脾臓に蓄積されたbubbleの崩壊距離が肝組織病変の進展度を反映するかどうか検討してきた.その結果,肝組織の病期の進展に伴い,肝臓のbubble崩壊距離は増加し,その距離により病期の進展度を予測できる可能性が示唆された.一方,脾臓のbubble崩壊距離は肝病変の進展に関わらず一定であった.
【目的】
 今回,C型慢性肝疾患を含め,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)やアルコール性肝疾患に対するCEUS後血管相におけるFRSを用いた肝臓および脾臓のbubble崩壊距離を検討し,その意義を明らかにする.
【方法】
対象は当院でCEUSが施行されFRSによる肝臓および脾臓の崩壊距離が比較検討された375例(健常者32例,C型慢性肝炎(HCCH;F2およびF3)276例,C型肝硬変(HCLC)62例,アルコール性肝障害(ALD)16例,アルコール性肝硬変(ALC)89例).超音波診断装置は東芝AplioXG,3.75MHzコンベックスプローブを使用した.推奨量のソナゾイドを肘静脈よりbolus静注し生理食塩水10mlでフラッシュした.投与10分後の後血管相において肝右葉S5を右肋間操作で,また脾臓を左肋間操作で観察した.Pulse subtraction modeで,焦点位置を6cmとし,MI値を1.6に設定しFRSでbubbleを崩壊させ,肝表面,脾表面からの崩壊距離を測定した.得られた崩壊距離を疾患毎に比較検討した.なお本検討は当院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
 肝表面からの平均bubble崩壊距離は健常者 36.5mm,HCCH 44.6mm,HCLC 54.8mm,NASH 52.1mm,ALD 49.2mm,ALC 77.3mmであった.健常者とHCLC,HCCHとHCLCに有意差を認めた.また健常者,HCCH,HCLC,NASH,ALDいずれにおいても各々ALCと有意差を認めた.脾表面からの平均bubble崩壊距離は健常者14.5mm,HCCH 17.8mm,HCLC 18.8mm,NASH 17.2 mm,ALD 21.0mm,ALC 27.4mmであった.ALC以外の症例間では有意差を認めなかったが,健常者,HCCH,HCLC,NASH,ALDいずれにおいても各々ALCと有意差を認めた.
【考察】
 本検討における肝崩壊距離の相違は,血管床のbubble量やKupffer細胞の数,機能などの要因が考えられる.特にC型慢性肝疾患症例では病気進展による崩壊距離の増加に前述した要因による肝実質内のbubble量の減少が関与していると考えられた.一方,ALC症例における肝崩壊距離は他の疾患と比較し顕著であり,脾崩壊距離はALC症例においてのみ各症例間で有意差を認めた.この原因は明らかではないが,ALC患者においては前に挙げた要因以外にエンドトキシン(Et)血症や各種サイトカインが密接に関係し,生体内全体の網内系異常が関与している可能性がある.
【結語】
 疾患により肝,脾におけるbubble崩壊距離が異なることがわかった.今後,症例数を増やすとともに各疾患におけるEtやサイトカインなどを測定し崩壊距離と比較し,さらにその意義を明らかにしたい.