Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

奨励賞演題:循環器

(S322)

心エコー検査による小児心臓検診の有用性:子育て支援イベント10年間のまとめ

Echocardiographic screening for congenital heart disease: 10 years’ experience in “Ogyatto 21” a prefectural project for child care

西尾 進1, 山田 博胤2, 山尾 雅美3, 平田 有紀奈1, 弘田 大智1, 玉井 利奈1, 佐田 政隆2, 森 一博5, 松岡 優4

Susumu NISHIO1, Hirotsugu YAMADA2, Masami YAMAO3, Yukina HIRATA1, Daichi HIROTA1, Rina TAMAI1, Masataka SATA2, Kazuhiro MORI5, Suguru MATSUOKA4

1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院循環器内科, 3徳島市民病院中央検査科, 4徳島市民病院小児科, 5徳島県立中央病院小児科

1Tokushima University Hospital, Ultrasound Examination Center, 2Tokushima University Hospital, Cardiovascular Medicine, 3Tokushima Municipal Hospital, Clinical Laboratory, 4Tokushima Municipal Hospital, Pediatrics, 5Tokushima Prefectual Central Hospital, Pediatrics

キーワード :

【はじめに】
先天性心疾患は乳幼児検診において主に聴診によりスクリーニングされており,出生1000人に対し約10人に先天性心疾患が認められると報告されている.徳島県では,2001年より5月3日・4日に子育て支援イベント「おぎゃっと21・徳島」を開催している.これは,出産や育児に夢の持てる社会づくりを推進する目的で,乳幼児とその家族を対象とするイベントである.同イベントでは,小児科医・臨床検査技師・看護師がチームとなって医療相談および検診を行っており,各種検診に加え,心エコー検査を施行している.今回,イベントが開催された10年分の心エコー検査の検査数・有所見数について報告する.
【方法】
2001年から2011年までの間に同イベントに参加し,心エコー検査を受けた7598例(0歳から就学前の6歳児)を対象とした.検査前に全例に問診を行い,すでに心疾患を指摘されている小児は除外した.超音波診断装置はGE社製Vivid E9,Vivid 7,東芝社製Aplio のいずれか2台を使用し,検査は循環器領域の超音波検査士が行った.異常所見があればカルテに簡単な所見を記入し,小児科医が行っている医療相談窓口へ案内した.
【結果】
各年における検査件数と有所見数を表に示す. 10年分の全検査件数 7598例,有所見数 122例,有所見率 1.6%であった.専門の医療機関で再検を必要とされた疾患の内訳は,心房中隔欠損症25例が最も多く,次いで動脈管開存症19例,心室中隔欠損症7例,肺動脈狭窄症7例,僧帽弁逆流4例,冠動脈-肺動脈瘻2例,大動脈二尖弁2例などであった.また,重症例としてBWG症候群1例,房室中隔欠損症1例なども含まれていた.
【考察】
日本では乳幼児検診が義務づけられており,受診率も高い.今回は乳幼児検診で異常なしとされている小児を対象としたが,1.6%に先天性心疾患を認めた.また,心雑音を聴取しないBWG症候群や大動脈二尖弁を発見することができ,その後の治療指針の決定に役立った.
【まとめ】
心エコー検査を用いた乳幼児〜就学前児の心臓検診により,1.6%に先天性心疾患が発見された.少子化社会において,心エコー検査による先天性心疾患のマス・スクリーニングは有用であると考えられ,行政による制度が確立していない現状で,このような子育て支援イベントは有意義であると思われた.