瀧 宏文¹, 阪本 卓也¹, 山川 誠², 椎名 毅³, 佐藤 亨¹

Hirofumi TAKI¹, Takuya SAKAMOTO¹, Makoto YAMAKAWA², Tsuyoshi SHIINA³, Toru SATO¹

¹京都大学大学院情報学研究科 通信情報システム専攻, ²京都大学先端医工学研究ユニット, ³京都大学大学院医学研究科

¹Graduate School of Informatics, Kyoto University, ²Advanced Biomedical Engineering Research Unit, Kyoto University, ³Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

【はじめに】
生活習慣病の予防,早期治療を行うためには血管病変の早期発見が必要であり,超音波血管イメージングの高分解能化によって血管病変のより早期の発見が可能となる．我々は周波数領域干渉計法を用いた高距離分解能血管イメージング法を提案してきた．本研究では参照波コンパウンド法を提案する周波数領域干渉計法に適用し,エコー電力の推定精度について評価する．
【実験方法と結果】
参照波コンパウンド法は複数の参照波を使用し,各参照波を用いて描出された周波数領域干渉計法画像を重畳する．複数の参照波を用いることにより,血管壁の傾きによらない安定した画像化が期待できる．本研究では0度から10度の傾斜角をもつ6層の境界面から成る構造体から得られる受信信号を作成し,1参照波を用いた場合,参照波コンパウンド法を用いた場合の周波数領域干渉計法画像を比較した．図1に示すように,両者とも6目標の分離,位置推定に成功している．しかし,1参照波を用いた場合では層構造体の傾きにより推定電力が20 dB以上変動する．一方参照波コンパウンド法を用いた場合では変動幅が3 dB以下である．この結果は参照波コンパウンド法により血管壁の傾きによらず安定して推定電力が求められることを示唆している．また,商用の超音波診断装置により健常者のin vivo頚動脈データを取得し,提案する参照波コンパウンド法を用いた高分解能イメージング法を1 frameのIQ dataに適用した．使用したプローブはリニアアレイプローブであり,送信波の中心周波数は7.5 MHz,走査線間隔は0.27 mmである．この結果,1 frameのin vivo ヒト頚動脈のIQ dataから高分解能超音波頚動脈画像が得られた．このことから,提案法により時間分解能を低下させることなく高分解能血管イメージングがin vivoにおいて実現できることがわかった．
【結論】
参照波コンパウンド法を用いた周波数領域干渉計法により,空間分解能を維持した上でエコー電力の推定精度を改善できることがわかった．また,提案法を用いることにより,既存の医用超音波診断装置に信号処理部分を加えるだけで時間分解能を低下させず高分解能血管イメージングが実現可能であることが示された．