Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

奨励賞演題:基礎

(S320)

カプラ付き探触子の正弦波加振による組織粘弾性計測の実験的検討

Tissue Viscoelasticity Measurement Using Sinusoidal Vibration of Probe with Coupler

山川 誠1, 椎名 毅2

Makoto YAMAKAWA1, Tsuyoshi SHIINA2

1京都大学先端医工学研究ユニット, 2京都大学医学研究科

1Advanced Biomedical Engineering Research Unit, Kyoto University, 2Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

【はじめに】
病理診断において組織の粘弾性特性は重要な指標であることが知られている.これまで我々は超音波を用いて組織の弾性特性を画像化する手法を開発してきた.また,最近では粘弾性特性が既知のカプラを用いてカプラ歪みと組織歪みの位相差を推定することで組織の粘性特性評価が可能であることを示してきた.本研究では,新たに正弦波振動を与えられる加振器を用いることで,粘弾性パラメータとしてより定量的な貯蔵弾性率および損失弾性率を評価する.
【方法】
組織とプローブの間に粘弾性特性が既知のカプラを挟み,加振器にセットされたプローブにより組織に正弦波振動を与える.そして,カプラ歪みおよび組織歪み分布を以前提案した拡張複合自己相関法により計測する.次に,カプラ歪みと組織歪みの間の位相差を相互相関関数により推定する.また,歪み比分布(カプラ歪み振幅/組織歪み振幅)も計測する.ここで,カプラの粘弾性特性(貯蔵弾性率,損失弾性率)は既知のため,計測された位相差分布と歪み比分布から組織の貯蔵弾性率,および損失弾性率を推定することができる.
【実験結果】
提案手法の有効性を確認するために,ファントム(周囲:1%寒天,9mm直径内包物:5%寒天)を用いて実験を行った.1.5Hz振動における位相差分布および歪み比分布推定結果は図1のようになった.また,貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”を推定したところ,1%寒天ではG’=55kPa,G”=3.2kPa,5%寒天ではG’=336kPa,G”=11kPaと推定された.機械的計測の結果は,1%寒天でG’=57kPa,G”=4.6kPa,5%寒天でG’=1.2MPa,G”=41kPaとなり,1%寒天では両者は近い値となったが,5%寒天では推定値が機械的計測値の1/4程度と過小評価された.これは今回,G’およびG”を推定する際に1次元仮定をしていることと,歪み推定における平滑化の影響と考えられる.また,シミュレーションの結果,正弦波加振の方(誤差2.8%)が三角波の場合(誤差3.3%)よりも位相差推定精度が向上することが確認された.
【結論】
今回新たに正弦波加振することで位相差推定精度の向上が確認され,またより定量的な粘弾性パラメータである貯蔵弾性率および損失弾性率を評価することが可能となった.ただし,内包物の推定精度に関しては,今後逆問題的手法などを用いてより正確に推定する必要がある.