神沼 智江, 山中 典子, 高橋 綾子, 対馬 義人

Chie KAMINUMA, Noriko YAMANAKA, Ayako TAKAHASHI, Yoshito TSUSHIMA

群馬大学医学部附属病院画像診療部

Department of Diagnostic Radiology and Nuclear Medicine, Gunma University Hospital

キーワード :

【目的】
Acoustic Radiation Force Impulse （ARFI）によるVirtual Touch Tissue Quantification （VTTQ） を使用した研究報告は増加しているが,各報告で測定方法が異なり,適切な方法等については更なる検討が必要である．私達は先の研究で,健常者の肝の測定値はプローベからの距離の影響を受けることを報告した．本研究の目的は,VTTQ測定の正確性及び安定性と,測定値に影響を与える因子について検証することである．
【対象と方法】
装置はAcuson S2000 （Siemens Healthcare）,ファントムはModel 049 elasticity QA phantom （Computerized Imaging Reference Systems, Norfolk, VA）を使用した．1）4個のファントムターゲット（ヤング率 8-80 kPa）とバックグラウンド（25 kPa）について,10回ずつ速度を測定．その平均値（mean shear wave velocity：MSWV）を求め,これより計算されたヤング率とファントム規定のヤング率を比較した．2）プローベ-ROI間の距離の影響を検証するため,コンベックスプローべで5〜80mm,リニアプローベで5〜40mmの深さのバックグラウンドのMSWVを測定し,測定値の変化と変動係数（coefficient of variation：CV）について検証した．3）C型肝炎患者25人（男性12人,女性13人,39-84歳）について,プローベからの距離3.5cm及び5.5cmの肝右葉のMSWVを測定し,距離の影響について検証した．
【結果】
1）リニアプローベでは,ファントム規定のヤング率とMSWVから計算されたヤング率との間に良好な直線関係を認めた （y=-0.98x-0.70; r2=0.98, p=0.0007）．コンベックスプローベでは,最も硬いファントムターゲットの測定値から得たヤング率は,規定のヤング率より明らかに低値となった．このデータを除くと,8〜40 kPaの間では良好な直線関係を認めたが,やや高値となる傾向があった（y=1.26x+1.01; r2=0.98, p=0.011）．2）リニアプローベではプローベ-ROI間の距離に関係なくCVは小さく,測定値は深部でやや低値となる傾向があった．コンベックスプローベでは25〜60mmではCVは小さく測定値は深部で低値となる傾向があったが,20mm以下の浅部や65mm以上の深部ではCVは大きく測定値も上昇した．（図）3）MSWVは,深さ5.5cm（1.48±0.26 m/s）では3.5cm （1.90±0.41 m/s）と比較して有意に低値となった（p＜0.05）．
【結語】
VTTQ測定の正確さはプローベの種類とプローベ-ROI間の距離の影響を受けるため,臨床応用にあたっては配慮が必要である．