Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

奨励賞演題:基礎

(S319)

超音波照射によるファントム内部温度上昇の3次元シミュレーション

Three dimensional simulation of temperature rise in phantom irradiation by ultrasonic

田中 伸, 佐久間 優, 土屋 健伸, 遠藤 信行

Shin TANAKA, Suguru SAKUMA, Takenobu TSUCHIYA, Nobuyuki ENDOH

神奈川大学電気電子情報工学専攻

The Cource of Electrical, Electronics, and Information Engineering, Kanagawa University

キーワード :

【緒言】
我々は超音波照射による生体内部の発熱を推定する為に,ファントム実験とシミュレーションを行っている.前報では赤外線サーモグラフィを用いた熱画像法よりファントム内の二次元温度分布測定をの結果を報告した[1].シミュレーションは3次元FDTD-HCE法(時間領域差分法-熱拡散方程式)を用いて温度推定を行う.FDTD-HCE法とはFDTD法を用いて媒質内の音圧分布を計算し,吸収減衰によって発生する熱を求め,これを基にHCE法を用いて温度計算を行う.
 本報告では実測実験と同じ音響・熱的パラメータのファントムや照射条件でシミュレーションを行う.両結果の温度分布を空間的に比較し,シミュレーションの妥当性を確認する.
【方法】
実験に使用したファントムはJIS記載のTMMの成分表[2]を参考に製作した.ファントムの減衰係数は0.4 dB/cm/MHzであり,他の熱的・音響的パラメータはJIS記載とほぼ同じである.予め半分に切ったファントムを空気が入らないように閉じ,吸音材の上に設置して中心位置に送波器(有効駆動径25 mm)を固定する.送波器中心から14 mmの有効駆動径外の位置とファントムの間にシース熱電対(直径0.3 mm)を挟み,照射中の送波器表面温度を測定する.周波数1 MHz, ISPTA=740 mW/cm2の連続波を10分間照射した後,分割ファントムを開いて赤外線サーモグラフィで測定する.シミュレーションは送波器面の発熱が一様だと仮定し,実験で測定した熱電対の温度の時間変化をファントムとの境界条件として与えて内部の温度推定計算を行う.
【結果】
Fig.1に送波器中心軸上の温度分布を示す.実験値とシミュレーション値では最大温度差0.3 ℃以内で良く一致した.Fig.2に方位方向の温度分布を示す.送波器近傍においては一様な温度を仮定したため実験値とは違う温度分布になった.送波器から20 mm離れた位置においては最大温度差0.2 ℃となり,ほぼ同様な温度分布になった.
【結言】
熱画像測定と3次元FDTD-HCE法を用いたシミュレーションを行った.送波器の発熱量を考慮してシミュレーションすることにより,中心軸上の温度分布は実験と近い値を得た.方位方向においては音源付近において温度分布に差があったが,音源の熱が届かない位置においては実験とシミュレーション共に近い温度分布が得られた.
【参考文献】
[1]田中他,日超医第84回学術集会2011,p.292
[2]JIS T 0601-2-37,2005