Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 体表臓器
ワークショップ11 甲状腺結節の超音波スクリーニング−放射線被ばく後検診をめぐって−

(S309)

小児の甲状腺癌

Thyroid cancer in children and adolescents

村上 司, 檜垣 直幸

Tsukasa MURAKAMI, Naoyuki HIGAKI

野口病院内科

Department of Endocrinology, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation

キーワード :

【はじめに】
小児期の甲状腺癌は稀である.自験例の超音波所見を含む臨床像について分析し文献考察と併せて報告する.
【甲状腺悪性腫瘍手術例における小児甲状腺癌の頻度】
2010-2011年に初回手術(生検を含む)を受けた甲状腺悪性腫瘍1009例のうち19歳以下の症例は10例(1.0%)であった.10例中7例は乳頭癌,2例は濾胞癌,1例は髄様癌(MEN2A)であった.
【19歳以下の甲状腺癌症例】
遡って2000-2011年に初回手術を受けた19歳以下の甲状腺癌症例は58例であった.術後の病理検査で偶然発見された16例を除く42例は女性37例,男性5例,15歳以下が16例,16-19歳が26例.乳頭癌36例(びまん性硬化型乳頭癌4例を含む),濾胞癌3例,髄様癌3例であった.
【乳頭癌症例】
びまん性硬化型乳頭癌を除く32例の乳頭癌について超音波所見,細胞診所見,病理所見を検討した.腫瘍径は4-65mm(中央値17.5mm)であった.超音波検査では,形状不整,充実性,内部低エコーの所見はそれぞれ27例(84.4%)に認めた.境界部低エコー帯は全例認めず,高エコースポットは20例(62.5%)に認めた.超音波診断を悪性としたものは27例(84.4%)であった.超音波検査でリンパ節転移を疑った例は18例(56.3%)であったが,術後の病理検査では28例(87.5%)が転移陽性であった.細胞診は全例に施行され29例(90.6%)が悪性,1例(3.1%)が鑑別困難との診断であった.32例中4例は診断時に肺転移を伴っていた.びまん性硬化型乳頭癌4例は全例超音波検査,細胞診で乳頭癌と診断されていた.
【考察】
小児甲状腺癌は小児悪性腫瘍の0.6%1)と稀なもので,甲状腺外科研究会甲状腺悪性腫瘍登録集計2)によると19歳以下の例は甲状腺癌の1.6%を占めるに過ぎず,その82.8%は乳頭癌であった.小児甲状腺癌は頚部腫瘤や頚部リンパ節腫大を契機に診断されることが多く,成人に比べ腫瘍径が大きくリンパ節転移の頻度もより高いことが報告されている.診断時に遠隔転移のある頻度も高く術後のリンパ節再発の頻度も高いが,生命予後は一般に良好である.診断に超音波検査,細胞診が有用である点は成人と同じである.小児甲状腺癌の超音波所見を分析した報告3)4)では悪性を示す所見として内部低エコー,形状不整,血流増加,微細石灰化,リンパ節の異常所見が挙げられている.自験例でも19歳以下の甲状腺癌は全甲状腺癌の1.0%と少なく,乳頭癌が大部分を占めていた.診断には超音波検査,細胞診が有用であった.
【参考文献】
1)日本小児外科学会悪性腫瘍委員会: 小児の外科的悪性腫瘍 2009年登録症例の全国集計結果の報告 日小外会誌47: 90-126, 2011.
2)甲状腺悪性腫瘍登録委員会: 甲状腺悪性腫瘍登録集計(1977〜2003) 第37回甲状腺外科研究会抄録集 201-15, 2004.
3)Lyshchik A, et al.: Diagnosis of thyroid cancer in children: value of gray-scale and power Doppler US. Radiology 235: 604-13, 2005.
4)Corrias A, et al.: Diagnostic features of thyroid nodules in pediatrics. Arch Pediatr Adlesc Med 164: 714-9, 2010.