榎戸 克年¹, 繁永 礼奈¹, 中村 清吾¹, 村松 みどり², 君塚 菜奈美², 山岸 智子², 齊藤 幸映³, 山津 桂子³

Katsutoshi ENOKIDO¹, Rena SHIGENAGA¹, Seigo NAKAMURA¹, Midori MURAMATSU², Nanami KIMIZUKA², Tomoko YAMAGISHI², Yukie SAITOU³, Keiko YAMATSU³

¹昭和大学病院乳腺外科, ²昭和大学病院超音波センター, ³キヤノンMJ医療機器ニュープロダクト販売課

¹breast surgical oncology, Showa university hospital, ²Ultrasound unit, Showa university hospital, ³Medical Equipment New Products Sales Dept., CANON MJ

キーワード :

【目的】
乳腺エラストグラフィが乳腺疾患の良悪性の診断補助に有用であることが報告され,広く用いられるようになっている．しかし,圧迫の程度により結果が異なる可能性があることから施行者の依存性や再現性が問題になることがある．近年は,組織内に横波（Shear wave）を発生させて,その波の伝搬速度を測定する方法が注目されている．海外の報告では施行者依存性が低く,高い再現性が報告されている．当院では2010年6月よりShear Wave Elastography （SWE）を導入し,その有用性を検討している．
【対象/方法】
2010年6月22日から2011年1月31日までに当院で従来のB-モード像とSWEを用いて乳房超音波検査を行った症例のうち,手術もしくは細胞診・針生検で病理診断が確定した180例を対象とし,病理組織像と定量値の相関に関して検討を行った．超音波機器は,SuperSonic Imagine社製Aixplorerを使用した．
【結果】
平均年齢は53.0歳（24〜91歳）,病理組織結果は良性病変48例（線維腺腫19例,乳腺症16例,のう胞2例,乳管内乳頭腫8例,葉状腫瘍2例,管状腺腫1例）,悪性病変が131例（非浸潤性乳管癌17例,乳頭腺管癌10例,充実腺管癌8例,硬癌80例,浸潤性小葉癌4例,粘液癌6例,浸潤性微小乳頭癌1例,アポクリン癌3例,神経内分泌腫瘍2例）,境界病変1例,であった．SWE画像で腫瘤の硬さが周囲組織と同じで,柔らかい腫瘤と判定された症例が10例（良性8例,DCIS 2例）あり,Bモード画像の評価はカテゴリー3であった．定量値の測定が可能であった腫瘤では,良性病変の中央値は43kPa（9.2〜268）,悪性病変の中央値は98kPa（9.1〜300）であった（p＜0.05）．
【考察】
今回の検討では,悪性腫瘍における定量値が大きく,SWEが良悪性の鑑別に有用である可能性がある．Bモード画像で診断に苦慮するカテゴリー3の病変については,SWEで周囲組織と同じ硬さを示すものについては生検を減らせる可能性が示唆された．SWEの定量値についてはカットオフ値や,その活用方法については確立していないため,今後も症例を集積し検討を行う必要がある．