尾本 きよか^{1, 3}, 蓬原 一茂², 関根 理², 櫻木 雅子², 松永 宏明³, 谷口 信行³

Kiyoka OMOTO^{1, 3}, Kazushige FUTSUHARA², Osamu SEKINE², Masako SAKURAGI², Hiroaki MATSUNAGA³, Nobuyuki TANIGUCHI³

¹自治医科大学附属さいたま医療センター臨床検査部, ²自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科, ³自治医科大学臨床検査医学

¹Laboratory Medicine, Saitama Medical Center, Jichi Medical University, ²Surgery, Saitama Medical Center, Jichi Medical University, ³Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University

キーワード :

【はじめに】
2007年に第2世代のソナゾイドが発売され,肝腫瘍の精査・治療のためのモダリティとして,現在多くの施設で利用されている．低〜中音圧の超音波照射であれば,気泡は崩壊することなく長時間の造影効果が得られるため,最近では適応外の臓器（胆嚢,膵臓,腎臓,乳腺,甲状腺など）における臨床研究も盛んに行われている．現在乳腺領域ではソナゾイド適応拡大に向けた治験が終了し,その使用が待たれるところであるが,当教室でもこのソナゾイドを用いた体表臓器対象の臨床研究を行っている．今回乳腺腫瘍の良悪性判別およびセンチネルリンパ節同定法についてその臨床的有用性を報告する．
＃1．乳腺腫瘍の良悪性判別
【方法】
溶解したソナゾイド0.015 ml/kgをone shotで静脈投与し,乳腺腫瘍を経時的に観察し,乳腺腫瘍の良悪性判別に関して次の評価項目について検討した．
【評価項目】
①時間強度曲線Time- Intensity Curve（造影強度Intensityを縦軸に経過時間Timeを横軸に設定しその関係をグラフ化）,②腫瘍血管の構築パターン（マイクロフローイメージングやキャプチャーモードによる血管の連続表示）,④造影超音波画像の3次元表示（3D-CEUS）
【使用装置】
日立アロカメディカル社製 “ProSoundSSD-α10”,UST-5412,東芝メディカルシステムズ社製“AplioXG”,PLT-1204BT,PLT-1204MV（4Dプローブ）
【結果】
悪性腫瘍は,時間強度曲線では急峻な立ち上がりを示すことが多く,血管構築は分枝状で密に分布するに傾向にあった．
＃2．乳癌のセンチネルリンパ節同定法
【方法】
手術前日検査室で,溶解したソナゾイド1mlを乳輪下に注射し,ただちに腋窩部を中心に観察する．造影されたセンチネルリンパ節SLNが同定されたならば,その部位の皮膚上にマーキングする．そして手術中に,色素法で同定されたSLNと一致するかを確認し,そのSLNを摘出し,病理学的に転移の有無をチェックする．
【結果】
50症例以上に施行したが,全例に1〜2個の造影されるSLNが同定でき,色素法で同定されたSLNともほぼ一致していた．
【考察】
表在領域における造影超音波検査は空間分解能の高さやリアルタイム性など優れた点が多く,今回検討した評価項目により乳腺腫瘍の良悪性判定の精度がより向上する可能性が示された．また造影超音波法による乳癌センチネルリンパ節同定法に関しては既に当教室で多くの検討がなされ,高い同定率が示されてきており,新たなモダリティとして普及することが大いに期待できよう．乳腺領域における造影超音波検査のニーズは今後も更に高まっていくものと思われる．