Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 体表臓器
シンポジウム3 乳腺超音波造影検査の有用性

(S301)

乳腺造影超音波検査の実臨床での応用(外科医の立場から)

Application of breast contrast enhanced ultrasound in clinical site (From the standpoint of a surgeon)

位藤 俊一, 水野 均, 飯干 泰彦, 山村 憲幸, 藤井 仁, 人羅 俊貴, 藤井 亮知, 大橋 朋史, 伊豆蔵 正明

Toshikazu ITO, Hitoshi MIZUNO, Yasuhiko IIBOSHI, Noriyuki YAMAMURA, Hitoshi FUJII, Toshiki HITORA, Ryochi FUJII, Tomofumi OOHASHI, Masaaki IZUKURA

地方独立行政法人 りんくう総合医療センター外科

Department of Surgery, Rinku General Medical Center

キーワード :

【はじめに】
肝腫瘤性病変の造影に適応を有する第二世代超音波造影剤DD-723(ペルフルブタン)は,乳腺領域での適応拡大を目的に臨床試験が終了予定である.我々は,乳腺領域における本剤の有用性について,様々な観点から評価を行うために院内IRBの承認,患者からの文書同意を取得し,臨床研究として造影超音波検査を行っている.特に外科医としての立場から,具体症例を提示し,本剤の実臨床における応用について述べる.
【使用機種】
東芝メディカルシステムズ株式会社:AplioTMXG(PLT-704SBT,PLT-1204BT)GE Healthcare: LOGIQ E9(ML6-15)
【実臨床における応用】
1.術式決定への応用(広がり診断)乳癌治療における造影超音波検査は,微細血流の評価を参考に,乳癌の広がりを診断評価できる可能性がある.広がり診断においては造影MRI検査が繁用されることが多いが,造影超音波検査は腎機能低下患者等のMRI制限患者にも施行可能で,迅速かつ簡便に実施可能である.造影超音波検査において,乳癌の広がりが確認され,術式決定に有用であった症例を紹介する.2.転移診断への応用本剤の現有する適応症である肝臓領域では,投与後早期に腫瘍血管や腫瘍濃染を描出する性質を利用した鑑別診断と,本剤投与後10分以降には,本剤が肝臓のクッパー細胞に取り込まれ,腫瘍部がperfusion defectとなる性質を利用した造影法(post-vascular phase)による存在診断が行える.本剤の静脈内投与により,腋窩リンパ節,胸骨傍リンパ節および鎖骨上下リンパ節等における造影により転移診断に有用であった症例を紹介する.3.non-surgical ablationにおける治療前後の評価への応用造影超音波検査が,治療前の術式決定および切除・焼灼範囲決定に有用である可能性については前述したが,治療後の効果判定にも応用できる可能性がある.RFAを施行した場合,熱凝固された範囲(ablation zone)は,造影超音波検査ではvascularityを認めない.このことにRFA施行前の腫瘍部および施行後のablation zoneを評価をすることにより治療効果判定が可能である.造影超音波検査において,RFA前後での治療評価が可能であった症例をMRI画像と対比し提示する.
【結語】
我々は,乳癌の診断から治療における様々な局面で,迅速かつ簡便に実施可能な造影超音波検査を研究使用しており,それぞれに有用であった症例を提示した.現在,第二世代超音波造影剤DD-723(ペルフルブタン)は,乳腺領域での適応拡大の臨床試験が終了予定であり,この適応取得により,外科医としては,質的診断のみならず術後の治療効果判定に至るまで日常臨床において幅広く応用が可能である.様々な局面での造影超音波の有用性におけるエビデンスが構築されることが期待される.