平井 都始子¹, 中村 卓², 高橋 亜希³, 伊藤 高広³, 武輪 恵³, 丸上 永晃¹, 小林 豊樹²

Toshiko HIRAI¹, Takashi NAKAMURA², Aki TAKAHASHI³, Takahiro ITOU³, Megumi TAKEWA³, Nagaaki MARUGAMI¹, Toyoki KOBAYASHI²

¹奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部, ²奈良県立医科大学乳腺外科, ³奈良県立医科大学放射線科

¹Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, ²Department of surgery, Nara Medical University, ³Department of Radiology, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
乳腺腫瘍に対するソナゾイド造影超音波（造影US）は,現在保険適用の認可に向けて臨床治験中で,われわれも第2相に続き第3相臨床治験に参加している．また独自に臨床研究として乳腺腫瘍に対するソナゾイド造影超音波を実施しているので,各種乳腺腫瘍の造影USの特徴像を明らかにし,乳腺腫瘍に対する造影超音波法の有用性について検討する．
【対象】
対象は乳腺腫瘍に対して造影USを施行した85例89病変の内,LOGIQ E9の振幅変調法による造影USを実施し,手術または細胞診で病理診断が確定した62症例65病変である．化学療法後症例は除外している．悪性病変が39病変,良性病変が26病変で,内訳は浸潤性乳管癌29病変,線維腺腫17病変,DCIS8病変,乳腺症4病変,その他の悪性病変2病変,良性病変5病変である．全例インフォームドコンセントならびに院内のIRBの承認を得ている．
【方法】
使用装置はLOGIQ E9で,振幅変調法（amplitude modulation: AM）による造影USを施行した．ソナゾイドは0.01ml/Kg体重を静注し,MI値は0.2程度,フォーカスは病変の最深部付近とした．9LまたはML6-15プローブを使用した．Bモードで腫瘍を観察後,カラードプラ法で腫瘍血流が最も豊富に描出される断面を選び,造影USを施行した．造影剤静注前から静注後約40秒は断面を固定して観察した．その後,病変全体をスイープして観察し,造影早期相の5から10秒程度の動画から積算画像を作成した．検討項目：1．病変の造影効果周囲乳腺組織と比較し,強い・同等・弱いまたは欠損の3段階に分類し,濃染を認めた場合は,均一濃染か不均一濃染か評価した．2．造影パターン　積算画像から円形平滑,分葉・不整形,鋸歯状に分類した．3．Bモード像と比較した造影範囲　Bモードで低エコーに認識できる範囲と比較して大きい,同等,小さいの3段階に評価した．
【結果】
1．悪性病変の造影所見　浸潤性乳管癌は全病変で造影早期より周囲乳腺組織より強い濃染を認め,均一濃染は3病変,不均一濃染は26病変であった．造影パターンは,鋸歯状が21病変,分葉・不整形が8病変で,円形平滑は0病変であった．小葉癌は分葉状の均一濃染を,粘液癌は不整形で不均一に濃染した．全ての症例で,Bモード像より造影される範囲は大きく,早期より強い濃染を認め,比較的早くwashoutする傾向がみられた．2．線維腺腫の造影所見　均一に強く濃染したのが9病変,内部に造影欠損を認め不均一に濃染したのが4病変,周囲と同等で,不明瞭となったのが1病変,ほとんど造影効果がみられず造影欠損を示したのが3病変であった．周囲より強い造影効果を認めた13病変の内11病変は円形平滑,2病変は分葉状を呈した．境界は平滑でBモード像と造影される範囲は全例において同等で,造影効果は持続する傾向がみられた．3．DCISの造影所見　嚢胞内癌の1例を除き,7病変はBモードで低エコーに捉えられる領域を含む広い範囲が不均一,不整形に周囲乳腺組織より強く造影された．4．乳腺症およびその他の良性病変　乳腺症と診断された4病変の内3病変は周囲乳腺組織と同等に造影され,不明瞭になった．1病変はBモードで認識される範囲が均一に濃染した．濃縮嚢胞と脂肪織炎は造影欠損,血管腫は5分以上持続する不整形の均一濃染を示した．
【考察とまとめ】
各種乳腺腫瘍はそれぞれ特徴的な造影所見を示し,良悪性の鑑別に有用と考えられる．また,悪性病変については病変の広がり診断に有用であることが示唆された．今後,さらに造影MRIやより詳細な病理組織との対比による検討も必要と考えている．