Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 腎泌尿器
シンポジウム10 泌尿器科癌取扱い規約にみる超音波診断基準の問題点

(S296)

精巣腫瘍における超音波検査の現況と問題点

Current Status of Sonographic Evaluation for Testicular Tumors

河本 敦夫1, 秦野 直2, 井上 理恵3, 石井 克也1, 青木 淑子1, 真田 茂4

Atsuo KAWAMOTO1, Tadashi HATANO2, Rie INOUE3, Katsuya ISHII1, Yoshiko AOKI1, Shigeru SANADA4

1東京医科大学病院放射線診断部, 2東京医科大学病院泌尿器科学教室, 3東京医科大学病院病理診断部, 4金沢大学大学院医薬保健研究域

1Division of Ultrasound, Department of Diagnostic Radiology, Tokyo Medical University Hospital, 2Urology, Tokyo Medical University, 3Clinical Pathology, Tokyo Medical University Hospital, 4Division of Health Sciences, Kanazawa University Graduate School

キーワード :

【はじめに】
 精巣腫瘍取扱い規約第3版では,超音波検査は陰嚢部腫瘤の性状を明らかにすることができ,被験者に低侵襲であり,肝や腹部大動脈周囲リンパ節への転移巣の検出にも優れているとされる.以上から精巣腫瘍の存在診断,質的診断,進展度診断いずれにも超音波検査は有用と考えられる.一方,超音波を用いるべきではないとの記述は,客観的治療効果判定における腫瘍病変の測定であり,再現性についての問題と考えられる.ただ原発巣が速やかに摘出される精巣腫瘍においては相当する場面は少ない.
【形態および血行動態評価】
 精巣腫瘍における超音波像は,内部性状に特有のパターンを持たない多彩な像を示すとされてきた1,2).しかし近年,超音波画像の空間分解能ならびにコントラスト分解能は大幅に向上,また低流速におけるカラードプラ法の感度も改善した.この現在の装置を用いて,形態的分類およびドプラ分類による超音波パターンと精巣腫瘍の各組織型との関連を調べると,それぞれ組織型により特徴的な所見を示していた3).組織・免疫学的検索がなされた精巣腫瘤48例を対象に,超音波像を形態的に1)結節型,2)地図型,3)嚢胞型,4)石灰化巣型,5)混合型,6)腺外型の6タイプに分類した.ドプラは,正常実質血流を基準にhypervascular,hypovascular,avascularに分類した.以上の組合せから,セミノーマ21例は,結節型(55%),地図型(35%),嚢胞型(10%)に分かれ,均一な低エコー病巣とhypervascularを特徴としていた.嚢胞型の2例は組織の鬱血・壊死を反映していた.非セミノーマ13例は,嚢胞型(42%),石灰化巣型(25%),混合型(33%)であり,従来の報告同様2),内部の不均一性を反映していた.リンパ・造血器腫瘍7例は,全例地図型かつhypervascularであった.これらの所見はセミノーマでも見られるため,超音波画像で,リンパ・造血器腫瘍とセミノーマとの鑑別は困難と思われた.Leydig細胞腫と表皮嚢胞ではセミノーマと同様結節型であったが,セミノーマに比し血流は乏しく,CFMで鑑別可能と思われた.また付属器由来腫瘍の場合は,腺外病変の有無を注意深く観察することにより精巣由来腫瘍との判別が可能であった.
【装置について】
 精巣は表在臓器である.精巣超音波検査に用いる装置は,超音波メーカーが表在臓器用と標榜する探触子を使用する必要性がある.中心周波数の低い腹部用コンベックス型探触子では,いくらハイエンドマシンであっても陰嚢内容の適正な画像を得ることは難しい.乳腺や甲状腺など表在臓器では,ガイドラインで探触子の中心周波数を含めた基準が定められ,仕様を満たすことが求められている. 高画質を得るための必須の項目として以下の3つを挙げる.1)高周波探触子:空間分解能の点から重要であり,少なくとも中心周波数10MHz程度が推奨される.2)ハーモニックイメージ:コントラスト分解能の点から重要であり,S/N比が改善される.3)高感度カラードプラ:精巣内血管の流速はPSVで3-5cm/s程度,微弱なシグナルを感度良く取り込む必要性がある.
【まとめ】
 今後,精巣超音波の精度を高めるためガイドラインを整備し,標準的画質を確立する必要性がある.
【参考文献】
1)沖原宏治,中村晃和,水谷陽一,他.STATE OF THE ART 精巣腫瘍.Jpn J Med Ultrasonics 2005; 32(2):167-175.
2)Dogra VS, Gottlieb RH, Oka M, et al. Sonography of the scrotum. Radiology 2003; 20:18-36.
3)河本敦夫,柿崎 大,秦野 直, 他.精巣腫瘍における超音波分類の検討.Jpn J Med Ultrasonics 2009; 36:sup.